臭い匂いと脳内物質との関係

匂いについて調べてみました。

「におい」は空気中を漂って嗅覚を刺激するもののことであり、においを意味する言葉にはさまざまな種類が存在します。
「におい」は英語のsmellに当たり、好ましいものも好ましくないものも含みます。また「香り」はfragranceやscentであり、好ましいにおいを意味します。「アロマaroma」は、通常、食べ物や飲み物から出る良いにおいを表しますが、「アロマセラピー」を考慮すると「におい」や「香り」の意味も含まれます。
「臭い」はodorに相当し「におい」を意味しますが、通常、不快なにおいのことです。「匂い」はニュートラルな「におい」、および、どちらかというと良いにおいに対して使われるようです。
そこで今回のコラムでは、匂いと情動と関係する脳内物質との関わりについて調べてみました。


臭い匂いと脳内物質との関係

バレリアンの匂いの元、イソ吉草酸(汗臭・足臭・加齢臭):Isovaleric Acidは吉草酸の異性体である3-メチルブタン酸の別名であり、またイソバレリアン酸とも呼ばれる。ごく低濃度では魚、貝、牛乳などの香気成分として香料に用いられるが、検知閾値濃度(臭気を感知できる濃度)は非常に低く、悪臭防止法で特定悪臭物質の規制対象となっています。

*悪臭防止法:(昭和46年6月1日法律第91号・平成23年に改正)の、工場やその他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭を規制することにより、悪臭防止対策を推進し、生活環境を保全、国民の健康の保護に資することを目的とする法律、不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって政令で指定するもののなかに特定悪臭物質がある。
*特定悪臭物質:(不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって政令で指定するもの)22種の中の一つに指定されている物質でもある。臭いとして、チーズもしくは汗臭、足臭、加齢による口臭のような不快感を伴う刺激臭がある。また、足の裏の臭いの原因物質である。天然物として多くの植物や精油に見られる脂肪酸でもある。化合物として、水への溶解度は2.4g/100ml と低く、極性溶媒よりも無極性溶媒によく溶ける最も低分子量のカルボン酸である。

このように臭い匂いは、時として精神作用と関係があるようです。
自然界に存在する匂い物質と私たちの生体に含まれるホルモンやフェロモンは似た構造をしているものがあります。そのため香り成分が脳に直接働いたり、イメージを引き起こしたりします。
日本味と匂い学会の研究報告では、例えば、図にあるとおり、興奮作用をもたらすドーパミンは、クローブのオイゲノールや唐辛子のカプサイシンといった匂い成分や刺激成分と構造が似ているので、これらの成分が人間の体に興奮作用をもたらしたりします。


匂いとホルモン

嫌な匂いは時としてストレスなどを受けている状態で、セロトニンが出なくなってしまう状況の人にとっては、セロトニンを誘発し、気持ちがポジティブになっていく効果を演出してくれることもあります。
精神物質と自然界の匂い物質が構造が似ているが故に作用に相関性があるというのはとても興味深いですね。植物の匂い成分を含んだ揮発油(精油)は、リラクゼーション効果などの生理活性作用があることが知られています。
  
ジャスミン・ラベンダーなどの香りが興奮や鎮静など脳の活動に影響することは、脳波の測定によって確認されています。またローズマリーの香りが記憶力を高めることは古くから知られていますが、最近、カカオを主原料とするチョコレートの香りが、集中度を高め、記憶学習能力を向上させることが報告され、多くの食品に活用されていることは皆さんも周知ことでしょう。

匂いと情動の関係は非常に面白く話が尽きないですね。


臭い匂いと食品

ところで、バレリアンのイソ吉草酸は前述のとおり、足の裏の臭いとか汗臭さ、或いは加齢による口臭と形容される、非常に不快感を伴う刺激臭を持つ物質です。臭覚検査では、腐敗臭や汗臭いにおいとされます。ところが、このイソ吉草酸をエステル化(酸とアルコールが反応して水が取れてできること)したものは、香料として広く使用されています。エチルエステルになると、アップル、メロン、ストロベリーなどの果実系香料になる。食品関係の方はご存知の方も多いでしょう。

有機酸は不快な臭いなのに、そのエステルは好ましい匂いになります。
実はこのような例は他にもあります。例えば、n‐ブタン酸(酪酸)です。 この酪酸、皮膚や粘膜に対する腐食性があり、水生生物にも有害な物質で日本では環境中への排出を禁止されています。この酪酸、最初にバターから得られたのでこの名が付いたのですが、銀杏臭の元となる成分でも知られます。ところがイソ吉草酸と同じように、エタノールでエステル化して得られる酪酸エチルは、パイナップルの香りを有する香料になるんです。実際にパインアップルやストロベリーの果実系香料に使用されています。

香料に使われるエステル類としては、他にも酪酸エチルやフェニル酢酸エチルなど、多種の物質が知られています。
そのほか、納豆、クサヤ、ギンナン、熟れ寿司などこの種類のにおいは、食品用語で「不精臭」と呼ばれています。「不精者の臭さ」「不精する人に出る臭み」から来た言葉です。 これらの成分は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸といった短鎖脂肪酸と呼ばれるグループになります。

例えば、大豆についた納豆菌が大豆の脂肪を分解し、脂肪を短鎖脂肪酸に分解して納豆のにおいをつくります。足の裏のにおいの仕組みも同じで、足の裏から出た汗の中の脂肪が、皮膚についている微生物で分解されて短鎖脂肪酸になって足のにおいに変わるわけです。同じ種類のにおいなのに、納豆は好ましく食欲を刺激されるように感じ、足のにおいは不快だというのは非常に面白いですね。
ちなみにこの種のにおいは、外国人の大半は好まず、嫌な顔をするそうです。しかし不思議なことに、同じ種類の短鎖脂肪酸によるにおいのきついチーズを日本人は敬遠するのに、西欧人は好んで食べます。不思議です。

バレリアンの香りも日本人には臭い匂いですが、ヨーロッパ人には、ブルーチーズのようないい香りに感じるらしい。
そこには、味覚だけではない、脳の経験に基づく慣れ(受容体の順応)が関係しているようです。脳科学の世界に入って行きそうなので、メカニズムについてはまたの機会にします。
きっと、バレリアンも食経験の長いヨーロッパでは好まれる香りなのかもしれないですね。

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