牧草の女王は栄養価の高い機能性野菜〜アルファルファ

牧草の女王は栄養価の高い機能性野菜~アルファルファ

アルファルファ Alfalfa

アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)はビタミンやミネラルが豊富な栄養価の高い機能性野菜でもあるハーブです。

学名:Medicago sativa (メディカーゴ サティバ)

和名・別名:ルーサン、ムラサキウマゴヤシ(紫馬肥)

科名:マメ科

使用部位:葉部(根は生薬のみ)


leaf3_mini 植物分類と歴史

アルファルファは中央アジアから帰化したマメ科ウマゴヤシ属の植物です。花茎から総状花序を伸ばし、夏に紫色の蝶形花を咲かせる落葉性多年草(宿根草)であるアルファルファは、主にハーブや野菜類として利用されています。その新芽は人が生食できる野菜ですが、和名ではムラサキウマゴヤシと呼ばれています。由来が「馬肥やし」であるように、馬・牛などの牧草としても活用されています。緑肥として土地の改良にも効果があるといわれています。
アルファルファの原産地はトランスコーカサス(ロシア連邦南西部やグルジア・アルメニア地方)から中央アジアと考えられていますが、現在では温帯を中心に世界の広い地域で栽培されています。ヨーロッパからの帰化植物で、日本には明治初期に輸入されました。現在では主に自給飼料として北海道を中心に栽培されているほか、ヘイキューブ(乳牛の飼料となる牧草を乾燥させたもの)として年間約40万tを欧米より輸入しています。

 
アルファルファの葉と花

その花序は総状花、花色は紫、莢はらせん状、腎臓型の種子を数粒つけ、葉は長卵形の3小葉からなっています。高さは30~90cm、茎は地際の肥大した冠部から形成され、さらに分枝して草丈は150cmになります。アルファルファはアルカリ性のやや乾燥した土壌を好むため、耐湿性はあまり強くありません。直根で土壌の深くまで根が入るため、干ばつに強い特性を持っています。強大な根は5~10mもの土中深くに達し、干害に強く、土壌から多量のミネラルを吸い上げるのでビタミン類が豊富です。そのため乾燥地、寒冷地などで多量の収穫をあげる牧草として高い利用価値をもっています。加えて高タンパク質、また嗜好性が優れることから「牧草の女王」と呼ばれ、世界中で広く利用されています。特に高泌乳牛に対応した高栄養価牧草として有名です。
アルファルファは種内変異が大きく、以前はヨーロッパやアメリカから導入した品種が利用されていたようです。現在栽培されている代表的な品種としては、北海道では多雪地帯向けの「マキワカバ」、道東など小雪地帯向け「ヒサワカバ」、東北地方以南では耐湿性に優れる「ツユワカバ」があります。まだ市販に至っていませんが、さらに能力の高い北海道向けの「ハルワカバ」、東北地方以南向けの「ネオタチワカバ」が近年育成されています。日本でのアルファルファの品種改良は、北海道農業研究センターや乳業メーカーなどで行われているそうです。
アルファルファという名前は「最高のたべもの」というペルシャ語がアラビア語に変化したもので、「FATHER ALL FOOD」とか、すべての「食物の父」とも呼ばれています。属名のMedicago(ウマゴヤシ属)は、おそらくアルファルファのこととされる古代ギリシャでmedikeと呼ばれた作物の名前によっています。その語源については、古代のメディア(Media)王国(現在のイラン北西部)が原産地と考えられたためであるとか、ラテン語で薬を意味するmediumと「用いる」という意味の動詞agoを組み合わせたものであるなど諸説あります。種小名のsativaは「栽培の」という意味です。また英語の別名luceme(ルサーン)は、キリストが生まれたその馬屋で聖なる子の眠る飼葉桶に敷き詰められた干草のルサーンが由来です。

 ● アルファルファの歴史

アルファルファは、人が飼料作物として用いた最も古い植物と言われています。紀元前4000年前後のペルシャの遺跡からその葉が発見され、紀元前1300年頃のトルコの書物にも記録が残っているという、とても古い植物です。原産地と考えられているイランからギリシャ、ローマを経てヨーロッパへ、さらに中国へと分布が広がっていきました。ヨーロッパに伝わったのは紀元前5世紀頃とされ、紀元前491年のペルシャ戦争の際、ペルシャ人がギリシャに侵入した道筋にはこの植物が生い茂っていたといわれます。ペルシャ軍は戦車を曳く馬の飼料としてアルファルファを用いていたそうです。中国には紀元前2世紀に渡来したとされ、帳賽(ちょうけん:中国前漢の政治家・外交官)が月氏国(げっしこく:紀元前3世紀から1世紀頃にかけて東アジア、中央アジアに存在した遊牧民族とその国家)から持ち帰ったもののなかのひとつとされています。また南米に導入されたのは新大陸時代でスペインから伝播しました。北米へは19世紀に導入されています。栄養価が高いアルファルファのタンパク質は、乾草の35%におよび、ミネラル類・ビタミン類も豊富なため、家畜特に馬の飼料として放牧・乾草・サイレージ(家畜用飼料の一種で、飼料作物をサイロなどで発酵させたもの)に使用していました。アメリカでは、現在でも重要な飼科作物として栽培量も多いです。

日本には江戸時代末期に渡来しましたが、酸性土壌の多い日本での生産は定着しませんでした。山陰地方の一部と北海道開拓史が牧草として導入したのが栽培の始まりとされていますが、実際に活用されるのは、明治初め、米国から北海道に導入されて以降のようです。江戸時代の本草学者である貝原益軒は、『大和本草』で「ごぜ菜」という植物について記述しています。本草学にも造詣の深かった明治時代の植物病理学者、白井光太郎博士は、この「ごぜ菜」をウマゴヤシと考定しています。
貝原益軒は記述の一部に「賤民(最下層の身分に定められた人民)飯に加へ食す」と書き、日本でもウマゴヤシを食べていたことを明らかにしています。ただしムラサキウマゴヤシは益軒の時代にはまだ渡来していなかったようです。


leaf3_mini 成分ほか

・サポニン類、L-カナバニン 、トリテルペン配糖体 、ステロール類(βシトステロール 、スチグマステロール 、カンペステロール など)、フラボン、イソフラボン類(クメストロール、ゲニステイン 、ビオカニン A、ダイゼインなど)、アルカロイド類(スタキドリン 、ホモスタキドリン など)、クマリン類(メディカゴール 、サティボールなど)


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

 アルファルファの食経験

主に牧草として活用されてきたアルファルファですが、人が食用とするようになるのは、種子を発芽させた新芽植物(スプラウト、芽生え)の栄養価が評価されるようになってからです。植物は発芽の際に多くの栄養素・成分を合成するため、発芽直後のスプラウト(=新芽)の状態のアルファルファには、さらに多くの栄養素が含まれています。発芽させて数日経たアルファルファのモヤシを、生でサラダにする、オムレツ、シチュー等の加熱料理へ食べる直前に加える、といった栄養価の高い状態で摂取すると効率が良いです。モヤシと同様に暗黒下で発芽させますが、モヤシ類のなかでは比較的細いことから「糸モヤシ」とも呼ばれています。その独特な風味とシャキシャキとした食感が消費者に好まれています。


スプラウト

 スプラウトの種類と機能性

アルファルファのスプラウトは、発芽に際してその種子の栄養素を分解し、吸収しやすい状態に変化させるとともに、ビタミンなどの産生を開始します。そのため多くのスプラウトについて機能性が研究され、市場に出回ることとなりました。スプラウトには光を当てずに栽培するものと光を当てるものがあり、光を当てないものはいわゆる「もやし」となります。光を当てたものは、葉が緑化したかいわれ大根のような製品です。メーカーによっては発芽途中まで遮光、後に光に当てて製造している製品もあります。ブラックマッペや緑豆を発芽させた一般的なモヤシ以外の代表的なスプラウトについて、用途や機能性などを以下に簡単にまとめてみました。


もやしなどのスプラウト類

大豆:マメ科ダイズの芽。韓国料理のナムルとしても用いられるモヤシ
ブラックマッペや緑豆モヤシが主流になるまでは、モヤシといえば大豆モヤシを指していました。大豆のたんぱく質が発芽の際にプロテアーゼで分解されるため、ペプチドやアミノ酸が増加しています。特にアスパラギン酸が豊富であり、エネルギー源として利用されやすいため、疲労回復を早める働きがあります。
かいわれ大根:アブラナ科ダイコンの芽
光を当てて作る種類のスプラウトの草分け的存在です。辛み成分はイソチオシアネート(スルフォラファン)。品種としては大阪四十日大根やかいわれ専用の品種が用いられています。ビタミンC、鉄やカルシウムが豊富で、メラトニン生成促進効果があるとされます。
ブロッコリースプラウト:アブラナ科ブロッコリーの芽
スプラウトブームに火をつけた立役者と言えます。辛み成分イソチオシアネートに解毒酵素誘導作用があります。
豆苗(とうみょう):マメ科エンドウマメの芽
中国料理によく用いられます。生命力が強く、家庭では上部を使った後で再度収穫できます。カロテン、ビタミンB1、B2、Eが豊富で、カルシウムやたんぱく質も多く含んでおり、貧血予防効果が期待されます。
そば:タデ科ソバの芽
緑葉で軸がピンク色の製品が多いです。そばスプラウトに含まれているルチンはポリフェノールの一種で、毛細血管と末梢組織との間の水分のやりとりをコントロールするため、利尿作用が期待できます。
紅タデ:タデ科ヤナギタデの芽
「蓼食う虫も好きずき」のタデの芽です。成木の葉に昆虫の摂食阻害作用があるのと同様に、紅タデにも抗菌作用があることが知られています。この紅タデの抗菌成分であり、辛みのもととなっているのは、ポリゴディアールというセスキテルペンジアルデヒドです。これは刺身のツマとして用いられています。

他にも紫キャベツ、マスタード、クレス、ひまわり、落花生などのスプラウトが知られています。光の要不要等の基本的な条件がありますが、種から発芽する植物であればスプラウトになります。ただし、種子や芽そのものに有毒成分が含まれている場合(ナス科のアルカロイドなど)もあるため、新品種のスプラウトを作りたい時には植物図鑑等で可食部分を確認することをお勧めします。

ハーブティーへの活用

成熟したアルファルファにはマメ独特の風昧があり、若葉や茎が茄で野菜として利用されています。それ以外にもサプリメント原料として利用され、柔らかい葉はハーブティーにも活用されています。ハーブティーは穏やかな風味と甘みのある草の香りを楽しむことができます。緑茶に似た風味もあり、クセがなく飲みやすいのが特徴です。植物療法的処方としては、栄養補給以外では、むくみの解消や老廃物を排出するデトックスのハーブとして利用されています。

またアルファルファは救荒植物(飢饉、戦争その他で食料が不足した時に、それをしのぐために間に合わせに食料として利用される植物)として利用されます。さらにイタリアやフランスなどでは、はちみつの採取のために栽培され、利用されることもあります。「アルファルファはちみつ」として知られ、有名なブランドもいくつか存在するほどポピュラーです。また種子の粉末は各種穀類製品に少量添加し、利尿や尿路感染に利用されています。


leaf3_mini アルファルファの機能性

ところで、この植物が世界的に有名になった背景に、私たちに馴染みの深い薬、「血液をサラサラにする薬」としてよく知られているワーファリン開発の基になったことが知られます。あまりにも有名な話なので、薬学を学んだ方は当然ご存知だろうが、詳しくない方へ簡単に背景をご紹介しておきます。

・ジクマロールとワーファリン

発端は1920年代にカナダで起こったスイートクローバー病。スイートクローバー病は家畜の飼料に使われていたスイートクローバーを食べた牛が出血をおこし、出血が止まらなくなり次々と死んでいった新しい牛の病気につけられた病名である。調査の結果、腐ったスイートクローバーを牛に食べさせることがその病気の原因であるとわかった。当時、牛の飼料がそれまでの牧草から、大量に収穫できるスイートクローバーに変えられつつあったことが起因する。また同時にムラサキウマゴヤシを食べさせると出血が止まることもわかった。その後、ウイスコンシン大学の生化学者が、腐ったスイートクローバーから出血誘発物質としてdicoumarol(ジクマロール)を見つけ、1943年には誘導体(リード化合物)としてワーファリンを合成することに成功した。

スイートクローバーの名前の由来にもなっている甘い香りは、クマリンという芳香物質によるもので、(クマリンは桜餅のにおいでも知られている)スイートクローバーが腐敗していくとき(発酵していくとき)微生物によってこのクマリンがジクマロールというクマリン二量体(分子2個が重合して生成する物質)に変化する。このジクマロールがビタミンK(血液凝固因子)の働きを抑えて、血液をサラサラにし固まらせなくしている。同じマメ科のムラサキウマゴヤシも発酵(腐敗)の過程でジクマロールが出来る。ただし新鮮な植物からは得られないので野菜として食している限りは大丈夫だが、くれぐれも新鮮な状態もしくは、乾燥させた状態で利用していただきたい。また漢方薬の分野では、黄耆(オウギ)の仲間の「土黄耆」として、マメ科の「キバナオウギ(綿黄耆)」の代用品として利用される。黄耆は『神農本草経』の上品に収載された補益薬(補気薬)で、現在でも「補中益気湯」「十全大補湯」「防己黄耆湯」など虚証(本来の生命力が弱まって体の機能が低下した状態)を対象とした多くの重要処方中に高い割合で配合されている。


さてメディカルハーブとしてのアルファルファは、葉・茎・花が利用されます。
ビタミン・ミネラルなど栄養補給、疲労回復、利尿作用、緩下作用、老廃物の排出、コレステロール低減、などの作用があり、糖尿病の改善にも、その効果が期待されている。また、アルファルファには体内の不要物を排出する強い作用があり「クレンジングハーブ」とも呼ばれています。ここからはアルファルファの多様な機能性について、少しご紹介します。
まずは、栄養補給の目的では、なんと言ってもビタミンおよびミネラルの豊富さがあげられます。
その栄養価は高く、葉にはβカロテン、ビタミンC、D、EやKその他ミネラル、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、などをふくんでいます。
馬さん、牛さんの栄養源であるということは人間様にも貴重な供給源なのである。
またタンパク質も豊富です。マメ科植物は根に根粒細菌を共生させ空中窒素固定ができるという特殊な能力を持っていて、窒素固定ができるとタンパク質生産が進み栄養価が高くなります。また、むくみのケアのためにも有用で、アルファルファのミネラル成分により老廃物や余分な水分が排出されることで、むくみの解消につながります。さらに葉緑素も含まれるため、ダイオキシン、有害ミネラルのカドミウムや鉛などの物質も除去してくれるキレート効果が期待できます。

そのほか栄養素以外の機能成分としては以下の成分の働きを期待できます。

●生活習慣病の予防に

アルファルファには高麗人参や大豆に含まれるサポニンが多く含まれている。サポニンは肝機能の改善などに漢方処方にもよく用いられます。
サポニンは弱った肝臓を助けて毒素の排出を促す作用を期待できる。またアルファルファのサポニンは血漿コレステロールを低下させ、アテローム発生を減少させることが報告されています。※1
「アルファルファが発芽してから8日目までの間に少しずつサポニンが蓄積されるものの、人間に対して有害な量になることはない。またアルファルファのサポニンはメディカジェニック酸グリコシドとソヤサポニンの2種類で全体の約90%が占められており、これらのサポニンが人間に対して有害であるとの報告はない。」
(2005年食品安全委員会「遺伝子組換え食品等専門調査会」議事録より)

またアルファルファに含まれるβ-シトステロールなどの植物ステロールはLDLコレステロールを低下させるはたらきがあり、特定保健用食品(トクホ)の「コレステロールが高めの方に適する」許可成分となっています。同様にクロロフィル(葉緑素)も含まれるため、食事からのコレステロール吸収を抑制し、血栓の予防や血圧を下げる作用があります。葉緑素の摂取によりコレステロール値が下がると、血液がサラサラになり血行が促進されるため、循環器系疾患予防に効果が期待できます。

・フィトエストロゲンハーブとして

アルファルファには女性ホルモンのエストロゲンとよく似た構造のイソフラボンが含まれています。イソフラボンは腸から吸収されて体内でホルモン様物質として働き、骨の代謝調節や更年期障害の抑制に役立つことはご存知の通りです。
その結果、骨からカルシウムが溶け出るのを防ぎ、結果的に骨粗しょう症を予防することができます。ただし、イソフラボンは数日で排出されてしまうため、定期的に補給する必要があります。アルファルファにはクメストロール、クメスタン、スピナステロールという形で含まれています。

クメステロール(coumestrol)はゲニステイン(genistein)などとともに骨粗鬆症治療薬「イプリフラボン」のシード物質として知られます。
ただし、フィトエストロゲンのハーブは妊娠中の女性が大量に摂取すると悪影響が出る危険性が示されています。また乳がん、子宮がん、卵巣がん、子宮内膜症、子宮筋腫など、エストロゲンが発症に関わっている各種の疾患を悪化させる懸念も報告されています(出典資料:アメリカ国立衛生研究所)。
また、更年期症状の治療への有効性の研究報告もあります。葉の抽出物を投与した実験ではプロラクチンや甲状腺刺激ホルモンの応答を活性化し、甲状腺放出ホルモンに対する応答を促す効果が報告されています。ホルモンの基礎レベルは変わらなかったことから、この報告では副作用のない抗ドーパミン作用を得られることも明らかになっています。この実験から、頬の紅潮や夜間の発汗といった更年期障害の症状の改善が示されています。※2

・運動機能を向上させる効果

またオクタコサノールを含み、このオクタコサノールには酸素利用の向上 、グリコーゲンの効率的分解、エネルギー生産量の増加といった働きがあるとされています。アルファルファに含まれるオクタコサノールは体内でグリコーゲンの蓄積に関わっており、スタミナとエネルギーづくりをサポートし、体力や活力の増強、筋肉痛の軽減、反射力や鋭敏性(えいびんせい:感覚が鋭いこと)の向上など運動機能の向上が期待できます。筋肉内にある筋グリコーゲンは運動によって消費されるので、グリコーゲンの蓄積量を増やすことで回復させるため、疲労回復の効果も期待できます。※3


オクタコサノール

なお、アルファルファには、以下のような注意点もあるので、サプリメントなどの摂取に関しては、摂取量など充分注意してください。

・摂取にあたっての注意

アルファルファの種子に含まれるカナバニンというアミノ酸は脾臓の腫れを伴う不良性貧血を起こすことがあります。このカナバニン(canavanine)は抗炎症作用や排膿効果がありますが、その一方、毒性も含んでいます。「L-アルギニン」と構造が似ていることから、体の中で間違ってピッキングされ、それを元にタンパク質が構成されます。その結果、正常とは違う構造や作用を持ったタンパク質が形成され、生体内で機能不全を引き起こすリスクがあります。

カナバニン

大量に摂取した場合、ループス(紅斑)のような症状が現れます。危険なのはスプラウトより、芽を出していない種子の状態のアルファルファなので、種子を使う場合は、過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。特に全身エリテマトーデスや多発性硬化症、関節リウマチなどの自己免疫疾患の人は注意が必要です。※4

もう一つ気をつけたい成分として、プロフィリン(profilin)があります。これはアクチンと呼ばれる微小フィラメントと結合する性質を持ったタンパク質の一種です。


プロフィリン

全ての細胞に存在し、細胞外の刺激に反応してアクチンの調節に関わっています。アルファルファに含まれるプロフィリンを大量に摂取すると、脾臓の肥大を伴う汎血球減少症(赤血球、白血球、血小板のすべてが減る状態)を発症する危険性が示されています。また肝機能に影響し、光過敏症(日光アレルギー)を引き起こす可能性もあるので、サプリメントの摂取の際は含有量も多くなりがちなので、光線療法を受けている方やアレルギー体質の方などは外出時など気をつけて欲しいです。※5

アルファルファのスプラウトなどは栄養価が高い野菜としてぜひ食してもらいたいし、その成分についての研究が進んでいる機能性食品なので、今後も新たなエビデンスの報告を期待したいですね。

(文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所)


参考文献

「ハーブの歴史」ゲイリー・アレン著
「サラダ野菜の植物史」大場 秀章著
「赤色を食べると若返る!」吉川敏一著
「これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典」主婦の友社
「和漢薬百科図鑑 改訂新版」難波恒雄著
「健康・機能性食品の基原植物事典」佐竹元吉ほか著
「Botanical Safety Handbook 2nd edition」 アメリカハーブ製品協会(AHPA)編

「Fifty Plants that changed the course of History」Bill Laws著
「The Complete New Herbal」 Richard Mabey著
「The Green Pharmacy」 James A Duke著
「ケルトの植物」Wolf‐Dieter Storl (原著)
「ハーブの安全性ガイド」Chris D. Meletis著
「メディカルハーブの辞典」 林真一郎編
「薬用ハーブの機能研究」 CMPジャパン(株)編

データベース
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed

※1 Lack of Toxicity of Alfalfa Saponins in Cynomolgus Macaques(Medical Primatology J Med Primatol 1982;11:106–118)
※2 Phytochemical and pharmacological potential of Medicago sativa: A review(Pharmaceutical Biology Volume 49,2011-Issue 2 Pages 211-220 Received 11 Jun 2010, Accepted 24 Jun 2010, Published online: 25 Oct 2010)
※3 日本新薬「マラソンで自己ベストを更新するために|FoodLabo 日本新薬 機能食品カンパニー」
※4 Systemic lupus erythematosus-like syndrome in monkeys fed alfalfa sprouts: role of a nonprotein amino acid. PubMed-Science. 1982 Apr 23;216(4544):415-7.
※5 厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル:巻貝:ピロフォルバイドa(光過敏症)」

 

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