健康食品を考えるVo7 「機能性って何?その2」

このシリーズでは食や栄養の基本的な考え方や今話題の健康キーワードなどを通じて健康食品について考えていきたいと思います。さらには薬とサプリメントは何が違うのか?また栄養素と非栄養素、機能性成分がどうからだに作用するのか?といったお話もさせてもらえればと思っております。食品・医薬品業界に従事する方や健康食品にご興味のある方には、ちょっとしたウンチクとしてご一読ください。


機能性素材を考える 第7回
「機能性って何?体に良いってどういうこと? その2」

前回に引き続き、機能性成分について考えてみます。今回はなぜ栄養素でもない機能性成分が体に良い機能を与えるのかを栄養素の働きと比較してみていきたいと思います。


機能面と生理化学的違いで分類してみると…

サプリメント成分を分類するときに、いくつかの分類方法がありますが、今回は成分の機能(働き)による分類と生理/生化学的違いによる分類で、機能性成分の役割や働きを整理してみます。

前号で食品の3つの機能(栄養、嗜好、生体調節機能)の概念についてお話ししましたが、サプリメントに含まれる成分をこの機能によって区別すると、栄養素のように「体の生命維持に不可欠な成分」と、直接栄養にはならないが、「体内の成分と反応して、機能をもたらす成分」に分類できます。食品分野では、前者を栄養成分(1次機能)、後者を非栄養成分(3次機能)と区別しています。

例えば、栄養成分の糖質はATP(アデノシン酸リン酸)という皆さんが生きて行くために必要なエネルギーを作り出す元となる物質を作る為に不可欠です。また生命維持以外にも、脳の栄養に重要です。もちろん糖尿病・生活習慣病の方の場合は、過剰摂取と燃焼の問題で糖質制限が必要な場合もありますが、最近は健常者の過度な糖質制限に警鐘を鳴らす医師も増えていることはご存知のことでしょう。

脂質はエネルギー源でもあり、ホルモンや細胞膜などを構成する物質です。中でも必須脂肪酸は太る脂ではなく、体の機能に重要な役割を持ちます。特にオメガ3系とオメガ6系の脂肪酸のバランスが大事です。さらに脂肪酸は臓器を保護し、脂溶性ビタミン(ビタミンA, D, E, K)の吸収を促す働きもあります。ただし同じ脂でも不飽和脂肪酸の過剰摂取は動脈硬化&生活習慣病のリスクを高めます。これは肉汁の美味しい脂ですね。

そしてタンパク質は体を作る栄養素(アミノ酸)です。ホルモンや酵素、免疫物質を構成するタンパク質の不足は、高齢者の低栄養、脳内物質の低下、ロコモ、骨粗鬆症、認知症、サルコペニア、フレイル・・などなど、昨今の注目健康キーワードの予防に重要です。もちろん、三大栄養素以外のビタミン&ミネラルは機能を正しく維持する生理作用の調節機能で不可欠です。以上の5大栄養素は生命維持に欠かせません。

一方、非栄養素は直接に生命維持には関わりませんが、体の生体防御や自然治癒力などの機能維持に一役も二役も担います。例えば、食物繊維は糖質脂質の吸収を穏やかにし、糖尿病や高脂血症等の抑制など、多岐に渡る機能を発揮します。さらに植物が作るフィトケミカルズ(植物化学成分)は抗酸化作用始め、様々な生理活性を呈します。

代謝される栄養素とそのまま作用する非栄養素

非栄養素成分は、「ATPを産生できない物質」です。分解されて体の一部にはなりませんが、体内の酵素や細胞などになんらかの作用を施し、いつのまにか出てってしまう成分です。
その機能は生理/生化学的違いがあり、作用機序(さようきじょ)体内動態(たいないどうたい)というメカニズムによっても成分ごとに異なります。非栄養素はエネルギー代謝などに関わる酵素に認識されず、異化(いか)という分解を受けない物質なのです。

元来、生命維持に必要なATPをつくれない物質をからだは必要としません。そこでからだは非栄養素に対して「(胃などの)消化管上皮細胞内で非栄養素を処理する酵素トランスポーターという物質を使って排除し糞便に排泄する」、もしくは、「体内に吸収して異化せずに、食べたときの化学形態を維持したまま体内循環させてできるだけ速やかに排泄する」という処理を行います。
つまり非栄養素は、形をほぼ完全に維持したまま、私たちのからだの中を巡り、そしてその非栄養素の化学構造と相性の良い体内のタンパク質に作用し、生体機能に良い働きを与え、ホメオスターシス(体調を整える)の維持に役立つ機能を持つのです。

そこで次回以降は機能性成分が、抗酸化や抗糖化、ロコモ、サルコペニア、フレイルといった、今後の健康トレンドにどう関与するのかを考えていきたいと思います。

(文責 クラウターハウス代表、国際栄養食品協会副理事長、健康食品産業協議会理事 橋口智親)

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