ペパーミントはすっきりしゃっきりだけではないぞ!眠れない人にもおすすめ

ペパーミントは「精神機能の調整」「生体機能の調節」「栄養補給・美容」の全てを兼ね備えたハーブ

ペパーミント Peppermint

学名:Mentha piperita (メンタ ピパリタ)

和名・別名:セイヨウハッカ(西洋薄荷)、胡椒薄荷(コショウハッカ)

科名:シソ科

使用部位:葉部


leaf3_mini 植物分類と歴史

ミントは、ハーブの中でも種類も多い植物としても知られているが、その多くは園芸種です。
ハーブ園などでもよくみられるが交配種が多く、どれがほんとのペパーミントなのか、スペアミントはどれなのか?という話題が絶えない植物でもあります。その歴史は大変古く、学名の「Mentha(メンタ)」は、ギリシャ神話に登場する「メンテ」という妖精の名前が由来とされます。神話の中では冥界の王であるハデスが惹かれた妖精のメンテがハデスの妻の嫉妬にあい、植物へと姿を変えられ、それを可哀想に思ったハデスが、メンテを香りの良い薬草へと変身させ、後にミントと呼ばれるようになったと言い伝えられています。また、ペパーミントの種小名である「piperita(ピペリタ)」は、食べるとコショウのようにピリッとした味がするため「piperita(コショウの)」「Mentha(ミント)」という意味から名付けられました。

ペパーミントといえば、紅茶やカクテルなどの飲み物やシャーベット、アイスやゼリーなどの夏のデザート、ガムやキャンディー、クッキーなどのお菓子、そして料理にも利用され、エスニック料理にはかかせないハーブのひとつです。反面、オーラルケア、スキンケア用品、医薬品にも利用され、私たちの生活に身近な植物として親しまれています。
ペパーミントはウォーターミントとスペアミントが交配して生まれた栽培種と言われています。別名を西洋ハッカと呼ぶように、日本人にはハッカの香りのイメージが強いハーブです。

古代ローマでは、ハーブ・バスとして利用したり、また古代ヘブライ人が部屋いっぱいに清涼感のある芳香を広げるために、床に敷きつめたミントの葉を踏みくだいたとも、伝えられています。その他、新約聖書の中にもミントに関する記述があります。

一般的に商用のミントといえば、メントールが最も多く65〜85%も含有する「和ハッカ Mentha arvensis L.」和種ハッカに比べるとメントールの含有量は「50~60%」と低いが、ミントの代名詞となった代表種「ペパーミント Mentha piperita L.」、そして、メントールを含まない柑橘系のカルボンなどが主成分の「スペアミント(ミドリハッカ)Mentha spicata L.」という3種類の大分類になりますが、品種が認定された種だけでも100種以上とも言われるほど交配種が多いです。

和ハッカは、一千年以上昔に中国から伝来したとも、日本各地に自生していたとも言われているが、有用作物として栽培されるようになったのは江戸時代である。
江戸時代の生物学者、貝原益軒が学術書の中でハッカ栽培の風景を掲載している。その後日本各地に広がり、1891年 (明治24年)頃には北海道にも伝播。1937年(昭和12年)頃には、日本は世界総需要量の9割を占めるハッカ王国へと躍進していた。その後戦争を経てはっかの栽培は激減。1954年(昭和29年)の生産高は最盛期のわずか7%にまで落ち込み、今では北海道の北見地方でわずかに栽培されるのみとなっている。最近では物産展や道の駅などで見られる程度のごく僅かになった品種。主に医薬品や添加物のメントール抽出物して利用されていた。現在では、和ハッカ種はインドが主流で世界のハッカ精油総生産量の約73%を占める最大の生産国となっている。

食品の世界では主にペパーミントとスペアミントに大別されている。
スペアミントはカルボンのほのかに甘い柑橘系の清涼感が特徴的で食品素材のみならず、メントールのようなスーッとする強さがないため、料理にも合わせやすく外食産業でも多く使われています。デザートやお酒に入っているミントでスペアミントが多いのはこのためです。

かたやペパーミントはメントールの含有量が多いため、スペアミントよりも強力な香りと冷たさ(冷涼感)が特徴。乾燥させてハーブティーやサプリメントなどに機能性を期待して使用されることが多いです。また、カンファー,チモール,スピラントール,サリチル酸メチルとった成分同様、冷感剤(Cooling agent)の開発にも欠かせません。葉から抽出したオイルは精油(エッセンシャルオイル)に利用されています。

leaf3_mini 成分ほか

精油(L-メントール、メントン、メントフラン)、フラボノイド(アピゲニン、ルテオリン)、タンニン、カフェ酸、クロロゲン酸、ロスマリン酸

 安全性と相互作用

安全性
クラス1:適切に使用する場合、安全に摂取できるもの
相互作用
クラスA:相互作用が予想されない(医薬品との相互作用は認められないということ)
(Botanical Safety Handbook 2nd Edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)
*特に報告されていないが、胆石の治療中の際には使用を避けたほうが良い。


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

食経験
現在では種々の機能性が明らかになってきているミントたちだが、そのルーツは主に地中海付近と言われており、その食経験は、古代エジプトやギリシャの歴史的文献を初め、世界各地の伝統料理にも見ることができます。
古代エジプト時代には、「キフィ」というミントを含んだ香油を歴代のエジプトの王が使っていたという文献も残されています。かのクレオパトラも使用していたようです。またギザの大ピラミッドの建設には労働者の食事にミントが用いられたと記録されています。(おそらく賦活作用として活用されていたのだろうと思われます。)

今日でもエジプト料理や中近東の料理ではミントティーはよく食後のティーとして利用されています。モロッコティーなどが有名です。ガンパウダーと呼ばれる中国緑茶とミント、たっぷりの角砂糖をポットに入れ、熱湯を注いでいれる伝統的なお茶のひとつです。

古代ギリシャ人の日常でもペパーミントをお茶の中に入れて飲んでいました。当時ペパーミントの香りは心の疲れを癒してくれると信じられ、風呂にいれたり、ティーにしてリラックス効果を期待していたようです。

また乾燥した葉は、スパイス同様、ラムやマトン料理などの臭い消しや風味づけにも利用されています。料理の風味付けとしては、スペアミントが多く使われてきました。ローマ人が伝えたとされるイギリスのラムローストにかけるミントソースは有名ですが、逆にフランスではミントソースはワインの味を台無しにするとのことで、イギリス人を嫌っているという話もあるそうです。イギリスでは新ジャガの味付けにミントを使う。野菜独特の硫黄化合物(アク)をカルボンなどの成分がマスキングしてくれるのでしょう。

またもっとも有名なリキュールの一つ、「クレーム・ド・ミント(抽出したミントオイルをスピリッツに配合して造り、爽やかなハッカの香りが印象的な逸品)」や中世の「シャルトルーズ(不老不死の霊薬として1600年頃に作成された処方が、1764年にシャルトルーズ修道院に渡り、1767年に製造がはじまった)」など、中世ではミントをつかった薬草酒は「消化を促し気分をよくする薬」でした。

このようにヨーロッパや中近東といった地中海沿岸を中心に広がっていったミントですが、イギリスで商業ベースでの栽培が1750年ごろから始まり植民地のインドにもミントが広がっていきました。南インドでは、サモサには甘いチャツネ、パコラにはミントソースが定番。さしずめ日本だったら焼きそばには「紅しょうが」が必ずついてくるのと一緒らしいです。

かつてヒポクラテスの医学書では41種類の治療薬の中にペパーミントを加え、健胃薬、気付け薬として処方されていたほど古い薬草の一つです。WHOの「WHO monographs on selected medicinal plants」においては、ペパーミントの葉と抽出オイル(精油)がそれぞれ別項目として収載されており、精油では臨床データとして「過敏性腸症候群(IBS)」に対する対症療法として、またティーなどの内服としては消化機能の異常に、また外用としては筋肉痛や頭痛への有用が示されています。

ペパーミントは、スペアミントとウォーターミントの交配種であり、その主成分はメントール系の成分です。
主に主成分のLメントールが胃弱や神経性の症状緩和に用いられ、食欲不振、食べ過ぎ等の胃腸ケアや便秘といったストレス性疾患の予防に自然療法の分野でも活用されています。ケルト民族の植物療法を祖とするドイツの自然療法「クナイプ療法」では、薬草浴に「生命力を高めるペパーミント浴」として活用されています。

またペパーミントには賦活作用のLメートール成分だけではなく、鎮静作用を持つアピゲニンルテオリンも含まれ、アレルギーや炎症の症状緩和でも知られている。最近ではアピゲニンの抗腫瘍作用なども報告されています。(オハイオ州立大学の研究者による細胞の研究では癌細胞の死を逃れる「スーパーパワー」を奪うことが示された。)

ハーブには「精神機能の調整」「生体機能の調節」「栄養補給・美容」といった作用がありますが、ペパーミントはそれら全てを兼ねたハーブです。その中でも特に、胃腸の調子が悪いときや、喉がいがらっぽくの咳や痰が出るような症状の改善に効果が見られます。花粉症などで鼻が詰まった時などにもお勧めのハーブです。

また、気持ちが落ち込んでいるときなど、メンソールの爽やかな香りが、気持ちをリフレッシュするのに役立ちます。
中枢神経を刺激し、脳の働きを活性化するので、暑い夏、集中力が途切れたりして、気分転換が必要なときにオススメします。最近の研究では、その強力な殺菌力が食中毒などを防ぐのに役立つことも証明されています。モーニングティーや油っこい食事の後の飲み物として、ペパーミントティーを加えるとよいでしょう。

またLメントール以外に、アピゲニンも含まれているので、平滑筋に直接的に働きかけ、カルシウムイオンの調整を行い、リラックスさせることが報告されており、鼓腸や過敏性腸症候群にも適用されています。ペパーミントは、スキッとさせるというイメージが強いハーブですが、反面鎮静効果も高いため、ストレスの緩和や、咳を鎮める働き、あるいは不眠の治療薬としても使われるほどです。
意外と知られていない働きですね。

また胃腸系の不調にも役立つハーブです。成分が胃壁を刺激し、腸内のガスを減らすので、消化を促進する効果があり、服痛や胃痛を抑えます食べ過ぎや消化不良による胸やけや吐き気は、ひどくなると片頭痛を伴うこともあります。そんな時のおすすめなのがペパーミントのハーブティーです。さらに花粉症にも効果があり、スギ花粉症によるとみられる鼻粘膜の腫れに改善がみらるようです。

(文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所)


参考図書
「The Green Pharmacy James A Duke著
「The complete New Herbal Richard Mabey著」
「Botanical Safety Handbook アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集」
「メディカルハーブの辞典 林真一郎編集」
「ハーブの安全性ガイド Chris D. Meletis著」
「薬用ハーブの機能研究 CMPジャパン(株)編集」
「Fifty Plants that changed the course of History Bill Laws著」
『西洋博物学者列伝―アリストテレスからダーウィンまで』ロバート ハクスリー著
「ケルトの植物」Wolf‐Dieter Storl (原著)
「お茶の歴史」ヴィクター・H・メア、アーリン・ホー著
「ヨーロッパの食文化」マッシモ・モンタナ―リ著 山辺規子・城戸照子訳、平凡社、1999
「中世ヨーロッパの生活」ジュヌヴィエーヴ・ドークール著大島誠訳、白水社、1975
データベース
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed®

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