近世の本草書について調べてみた。

ハーブの勉強をしていると、よくハーバリストという言葉を聞くことがあります。
先般スクールの生徒の方からご質問をいただいたので、ちょっとここでハーブを語る上で欠かせない研究書物について、少し整理をしてみたいと思います。
翻訳されているもの、解説本など手に入る書物も多いので、ご興味のある方はぜひご一読いただけるとより植物療法がわかりやすくなるかと思います。

近世という時代は「ルネサンス・宗教改革・大航海時代」というヨーロッパにおける大きな文化的変化を経て、人々の生活や食生活にも大きな発展がもたらされた時代と言ってよいだろう。ことハーブの世界では「大航海時代」によって東方や新大陸のハーブがヨーロッパにもたらされた後、植民地時代を迎えるとさらに、現地の食生活とヨーロッパのハーブや植物が融合されていった。文化的な改革も華やかなこの時代、大きな役割を担ったのが、グーテンベルクによる活版印刷術の普及だった。これにより多くの本草書が、ヨーロッパ各国で著されていった。まだ著作権などの概念のなかった時期のため、過去の書籍の記述や図版を無断借用したものも多く、ハーブについての書物もまた、市場競争とも言えるほど多く広められた時代だったようだ。

イギリスでの本草書

リチャード・バンクス『大本草書(Banckes’s Herbal)』

1525年、印刷業者リチャード・バンクスによって出版されたこの本は、イギリスにおいて、植物学の詳細な情報を盛り込んだ最初の書籍とされる。薬効についての記述よりも、植物の形態や描写について詳しいこの書籍は、1941年に現代版としてニューヨーク植物園より『大本草[1525]』として出版されたほどだ。ドイツ本草学が興隆する先駆けとなった『ドイツ本草』(1496年)と、『大本草』(1520年)を下敷きにして、中世英語で書かれた。

ジョン・ジェラード『本草書または植物の話(The Herball or Generall Hiftorie of Plantes.)』

イギリスで偉大な2人のハーバリストの一人、ジョン・ジェラード(1545~1611年)による書物。近世の時代はかつての古代ローマ時代のディオスコリデスの『薬物誌』を研究するものから、植物そのものを観察・分類する形へと移行し始めていた。ジェラードの本書はその両方の性質を含んでおり、また多くの図版も掲載された。

ニコラス・カルペパー『英語で書かれた療法 (English Physitian))』

17世紀になると、占星術師としても有名な、ニコラス・カルペパー(1616~1654年)が登場する。彼の著書には、占星術や錬金術、植物と人間の体の部位の相似性を説いた”特徴説”など独自の視点も盛り込まれている。カルペパーは現代でも人気が高く「ハーブ伝統の開祖」と捉えられている。英国内で読まれただけでなく、その後の歴史の中で、北米の植民地へ運ばれ、現地では医療書としても重宝された。


ドイツでの本草学

16世紀、『ドイツ本草』(1496年)と『大本草』(1520年)の2冊の重要な本草書は、その後ドイツ本草学が興隆する先駆けとなり、その後も重要な本草書が書かれた。

オットー・ブルンフェルス『本草写生図譜(Herbarium Vivae Eicones)』

この本草書がそれ以前の本草書と大きく異なる点はその図版の絵の精緻さである。それまでの簡易的な絵とは異なり、より写実的な絵が描かれた。植物観察の観点からも注目すべき点だった。この図版の改革は、のちの書籍にも受け継がれていった。

レオンハルト・フックス『植物誌(De Historia Stirpium)』

オットー・ブルンフェルス、ヒエロニムス・ボックとともに、「ドイツ植物学の父」の1人。ギリシャ・ローマ時代の古典の知識も鑑みながら、加えて植物の薬効や効果のある疾病も記されている。ドイツ産の植物が約400種、外国産の植物が約100種取り上げられている中、約40種はフックスによって初めて取り上げられた植物である。
ヴァレリウス・コルドゥス『植物誌(Historia Plantarum)』
フックスらとともに「ドイツ植物学の父」の一人。当時ヨーロッパのハーブの伝統的中心であったイタリアへ実際に足を運び、地中海のハーブを直に見聞した。本草書としての植物学的な解説に加え、薬学的な解説も加えられている。


フランスでの本草書


シャルル・エチエンヌ『農業と田舎の家(Agriculture et maison rustique)』
フランス語で書かれた最初の本草書とされ、この書籍の中では、ハーブガーデンが提唱されており、主にバーム、バジル、コストオマリー、ヒソップ、ラベンダー、マージョラム、ローズマリー、セージ、タイムなど香りの良いハーブを植えることが薦められている。


<文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所>

関連記事

  1. 水出しアイスティーに向いているハーブは?

  2. ヒポクラテスってどんな人??

  3. 聖母マリアの申し子は弱った肝臓の強い味方〜ミルクシスル

  4. 賢く美白に!ハーブティーは飲む美白?!

  5. 生命感覚の賦活と植物療法 その3

  6. 植物由来の粘液質について考えてみる

最近のコメント

    過去の記事検索

    error: Content is protected !!