神々の飲み物〜イェルバ・マテ

神々の飲み物〜イェルバ・マテ

マテ Yerba mate

マテは「飲むサラダ」と呼ばれるほどビタミン&ミネラルが豊富!茶、コーヒーとならぶ世界三大ティーの一つです。

学名:Ilex paraguayensis

和名・別名:イエルバ・マテ

科名:モチノキ科

使用部位:葉部


 植物分類と歴史

この数年、よく知られるようになったマテ茶の原料マテはイェルバ・マテ(yerba mate)という葉を加工したものだ。コーヒー、茶(緑茶、青茶=ウーロン茶、紅茶などの6大茶)と並ぶ世界の三大ティーの一つとして有名なのでご存知の方も多いだろう。現地南アメリカではコーヒーに代わるナショナルドリンクとして多くの人に好まれている。元来は原住民であるグァラニ族が活力を与える不思議な木として飲用を始めたことが起源とされている。インカ帝国以前の時代から飲まれ、1000年以上前のアンコンの遺跡からも出土している。またグァラニ族はマテを通貨として利用していた史実も残っている。それほど古くから飲みつがれてきた飲み物なのだ。彼らは「神々の飲み物」と呼び、のちにヨーロッパでは「インディオの緑の金 (The green gold of the Indios)」と呼ばれるようなる。このイェルバ・マテはブラジル、パラグアイ、アルゼンチンにまたがる大西洋の亜熱帯林で、有名な巨大な滝「イグアスの滝」周辺を原産とする陰性植物だ。(イグアスの滝は世界有数の自然公園で、黄金色の魚ドラードなど固有の動植物の宝庫でもある。)モチノキ科の常緑樹で主に経度10度から30度の間の地域が最適とされ、年関最大雨量1500mmの高温高湿を好む。特にパラグアイで最も広く栽培され、オレンジの木に似ており、幹はだいたい直径20~25センチでグレーがかった色をしている。葉は互生で楕円形であり、周囲が鋸歯状になっている。

10月から12月の間に開花するが、雌雄異株の為、雌花を付ける株と雄花を付ける株がそれぞれ異なる。大きくても約15メートルほどだ。果実はとても小さな玉状で2つずつ実り、最初は緑だが、熟す頃には鮮やかな赤紫色になる。成長したマテは独特の甘苦い風味があり、日陰で育ったマテはより多くの薬効と栄養素が含まれるという。かつてインディオたちは昔から自生していたマテの木を探し求めて葉と茎を採取していたが、近年、需要の高まりに対応する為に各地でマテの栽培が行われている。パラグアイ、アルゼンチン、ブラジルの3国が接するパラナ川、ウルグアイ川の流域が最大の生産地帯だとか。ただ、やはり天然モノの豊かな香と風味を凌ぐことは難しいようだ。野生のマテの木は丘陵地帯の湿った窪地に多くに多く見られる。通常1本のマテの木から1年間に採取できる葉の量は、乾燥した状態で30~40kgに相当し、収穫の時期になると、『タラフェイロス』とか『ジェバテイロス』と呼ばれる採集者達が、『マンチャ』と呼ばれるマテの密生林を求め、ジャングルへ分け入って行く。
収穫の時期は5~11月で、その時期になるとマカの葉が青々と生い茂るが、毎年持続的に収穫ができるよう、同じ木からの葉摘みは3年に一度とされるのが常のようだ。

野生のマテの木

野生種は完全に成長するまで約25年もかかり、大きいものは15メートルに達するが、栽培されたものは収穫しやすくするため3〜 5メートルの高さを剪定しながら維持するそうだ。7年目から収穫が可能になり、成長したマテは独特の甘苦い風味がある。収穫は約40年間続けられるので、持続的に収穫すれば最良の作物となり得るのだ。日本でも栽培を試みているらしいが、気候風土と土壌が違うので、かつてパラグアイから、ひそかに持ち出され他国で大量に栽培されたといわれる2大特産品の一つステビアと異なり、もう一つの特産品マテは前述の3カ国でしか栽培できないそうだ。
ところでイェルバ・マテという名前の意味はスペイン語の「草」(yerba)に、ケチュア語の「コップ」または「ひょうたん」(mate)を組み合わせた造語とされる。


ペルーを代表する伝統工芸の1つ、「Mate Burilado/マテ・ブリラード」
Mateはケチュア語の「Mati(マティ)」が語源で「ひょうたん」、Buriladoは「彫刻刀で彫った」という意味。よく乾燥させたひょうたんに細かい彫刻を施した、とても可愛らしい置物だ。


マテ茶の歴史

その歴史は古く、インカより昔から原住民のインディオ(グァラニ族)たちが飲んだのが始まりと言われている。その後、15世紀末から現地に進出、植民を始めたスペイン人の開発基地となったパラグアイを中心として計画的栽培が行われた。(大航海時代にキリスト教を伝えるために南米へ宣教師がやってきて、彼によってマテの人工栽培が行われるようになり、そして一部の地域ではマテの樹による商業化が進み、大きく発展を遂げたそして徐々に欧米人たちにもマテ茶が飲まれるようになった。)

とくに布教のためにこの地を訪れたイエズス会士たちにとって、マテ茶はその「布教村」の経済を支える重要な産品となった。初期の頃はマテ茶の木の自生地まで刈入れの遠征隊を送っていたものが、布教村周辺への移植、さらには困難とされる種からの栽培にまで成功する。このためマテ茶は「パラグアイのお茶“Té del Paraguay”」もしくは「イエズス会士のお茶“Té delos jesuitas”」 ことJesuit Tea(ジェスイットティー)としても知られるようになる。(イエズス会は、アルコール中毒者が多かった原住民に対して、代替となる健康的な飲料として栽培が奨励した。それまで飲む習慣が無かった地域では〔宣教師のお茶〕として広まったのだ。)また緩やかなカフェインなどのアルカロイドの刺激と利尿作用があることも発見され、以来薬用としても使用され、エネルギー補給の飲料として飲まれるようになる。


パラグアイのマテ銅像

パラグアイではイエズス会士追放(1768年)後、19世紀末にドイツ系移住地で種の発芽方法が解明されるまで再び生産を野生種に頼ることになり、更に周辺国との間に起こった三国戦争(1864-70年)による壊滅的な打撃がマテ茶製造にも及び、植民地時代のマテ茶生産における独占的地位はすっかり失われてしまった。現在、生産量においてはアルゼンチンが世界第1位,消費量においてはウルグアイが第1位(年間の消費量は国民一人当たり約 10 キロ)だ。南米それぞれの国の人々にとって「マテ茶は自国の文化」という思いも強いとはいえ、グァラニ族文化を国家アイデンティティーの重要な要素としてきたパラグアイ国民にとって、文化継承の象徴ともいえるマテ茶への思い入れは,他国に負けず劣らず強いようだ。以下にマテの逸話として幾つか紹介しておく。

16世紀に開拓としてやってきたスペイン人に追われる身となったインカ帝国の兵士たちはマテ茶を噛みながら、1年以上も荒れた地に潜み、生存していたという逸話がある。生野菜を食べず,澱粉(マンジョカ、マイス)だけに頼っている南米各地のインディオ達は昔からマテ茶を不老長寿の薬として常用しており、また大草原(バンバ)に牛の群れを追って生活するガウチョ達は栄養不足を補う活力供給源としてマテ茶は必携のものだった。第二次世界大戦時にも米軍の野戦病院で携帯食料としてマテ茶が入っていたという。あのサッカーのマラドウナが大のマテ茶の愛飲者である事もよく知られているところだ。サッカーファンだけかもしれないが・・

またマテの木にもいくつか伝説があり、アルゼンチンの北東部にあるミスヨネスでは、神様がイェルバ・マテを植えたという云い伝えがある。ほかにも、スペインの宣教師が南米の土地へやってきた際、ある地方に毒を持ったマテの葉があり、これを聖徒・トーマスの手で火にかけ、焙ったらマテの葉から毒が消え、インディオたちから感謝され、聖徒・トーマスはマテ茶の聖徒として崇められたという伝説もある。別のインディオの伝説では、旅の立派な老人がKaraiという首長の家に1晩だけ泊めてもらい、Karaiの娘がこの老人を一生懸命もてなした。翌日、老人は神の使者であることを明かし、Karaiに向かって「あなたの美しい娘さんは、親切に私の世話をしてくれたので、何かお礼をさせてほしい」と言い、Karaiの娘をマテの木へと変身させてしまった。そして老人は「これで娘さんは悪魔に会うことはなくなり、死ぬことなく不滅である。」と言い残し、去っていった。それ以来、このマテの木はKaaと呼ばれるようになり、この木を切ったり、倒したりしても必ず同じ場所から蘇り、強い生命力でどんどん成長していき、何年経っても若々しく、青々と葉を茂らせている。という伝説もある。

 

   成分ほか

アルカノイド(カフェイン、テオプロミン、テオフィリン)/フェノール酸(カフェ酸、クロロゲン酸)/ フラボノイド/ビタミン(B2、B6、C)/ミネラル(鉄、カルシウム、カリウム)

 安全性と相互作用

安全性
クラス1:適切に使用する場合、安全に摂取できるもの
相互作用
クラスC:相互作用が起こることが知られているハーブ(カフェイン)
*中枢神経刺激薬とカフェインとの併用は過度な中枢神経刺激を引き起こす可能性がある。
(Botanical Safety Handbook 2nd Edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)

 学術データ(食経験/機能性)

マテ茶は独特な香りと味わいではあるが、常用すると忘れられない。その秘めた魅力と肉食を中心とした食事で野菜の不足していたアルゼンチンのカウボーイ(ガウチョス)達は1日を乗り越える為にイェルバ・マテを「飲むサラダ」として摂取し栄養素を補っていた。食生活に欠くことの出来ないビタミン、葉緑素、カルシウムの補給源として、体験的、生理的にマテ茶を欲し、これを生活必需品として位置づけることになっていった。また、パラグアイでは古くから薬草師がイェルバ・マテを万能薬草剤の主原料として使用している。この万能薬はマテ茶の中に他の薬草を浸して作られ、血液の循環を良くし、体内のバランスを保つ事から他の薬草の効果を促進させる役割があると信じられてきた。

現地での一般的な飲み方を幾つか紹介しておく。紅茶や緑茶のようにポットでいれて飲むコシード式と、ひょうたん状の容器にボンビージャと呼ばれるストローを使用するユニークで伝統的なシマロン式があるが、大きく分けて4種類ある。

1、コップに大量の茶葉を入れてストローで飲む伝統的な「スィマロン」(ブラジルではシマウロン)。苦マテとも呼ばれ、濃いコクが楽しめる。

2、苦マテに砂糖を入れた「マテ・ドゥルセ」(ドーセ)。

3、紅茶のように、ティーポットに茶葉を入れて熱湯を注ぎ、3分ほど蒸らした「マテ・ティー」。

4、冷水に10分ほど浸して抽出した水出しマテ茶「テレレ」。

 
マテ壷とボンビージャ

マテ茶は冷たい水でも栄養価を抽出しやすいため、このような飲み方が昔からある。加えて前述のようにカフェインなどのアルカロイド成分を出したくない時にもオススメの淹れ方だ。現地では砂糖以外にもミルク、はちみつ、リキュールなど、自由に楽しみながら飲まれている。
マテ茶の製茶は、緑茶に近い製法だ。

 

葉や小枝などを採取し、すぐに火入れを行い、酸化酵素を不活性化させる。さらに熱風で乾燥させ、完全に酵素の働きを止める。日本茶の青殺(さっせい)に似ているかもしれない。カラカラに乾燥したマテの葉や枝は適度な大きさに刻まれ、1年ほど熟成される。この状態のマテ茶は「グリーン・マテ」と呼び、強い苦みと青臭さを感じる。これを焙煎することでクセを取り除き、香ばしい薫りに仕上げたのが「ロースト・マテ」(ブラック・マテ)と呼ばれる。

焙煎するのでビタミンは壊れてしまうが、飲みやすいのが特徴。日本で販売されるマテ茶のほとんどは、ロースト・マテだが、ハーブに詳しい方は、最近グリーンマテも販売されるようになったので、成分的にはそちらを好まれる方も多い。うちのスクールでも成分を重要視することもあり、グリーン・マテも推奨している。緑茶は時間をおくと薫りが飛んでしまい、せっかくの風味が損なわれることがあるが、マテ茶はプーアル茶の一つ、生茶のように熟成する課程があるため、比較的長期的に風味を保てる利点もある。

いかにそれぞれの製法を紹介しておく。

「グリーン・マテ」

収穫した葉は24時間以内にサペカード(目開き:葉に直火をあて表面にひび割れを起こさせ、20%脱水する)をし、1日位おいて乾燥させ水分率を5~6%にする。それを1cm角位に粉砕。さらに味と香を高める為に約一年間貯蔵して熟成させる。熟成したマテの葉を更に細かくし異物の選別した後、品質、味、産地、大きさ等消費目的によりブレンドして商品化する

「ロースト・マテ」

グリーン・マテを更に焙煎したものはロースト・マテとよび、グリーン・マテと区別している。日本のほうじ茶みたいなものだ。焙煎することにより成分の含有量はグリーン・マテよりは減るが、香ばしさが加わることで飲み易くなり、主にブラジルで飲まれている。どちらが良いかは好みだが、アルゼンチンやパラグアイではグリーン、ブラジルではローストが好まれているようだ。

マテ茶道
ところでマテ茶にも飲み方に作法があるそうだ。日本茶に茶道があるように、マテ茶にもマテ茶道があるらしい。茶道では来客に抹茶を回して振る舞うが、マテ茶道でも器とストローでお茶を立て、一煎目はホストが飲む。二煎目から順番に来客に一人づつ回し、客はそれを飲み干してからホストに返すのがルールだという。(日本の茶道のように、客で回し飲みはしない)ストローの位置が変わると味が変わってしまうため、客が勝手にストローの場所を変えることはできない。ホストから頂いて飲み干して返す、というのがスマートなマテ茶道とされる。ホストは都度、茶葉を足したり、ストローの位置を変えたりして、味の調整を行う。
客は満足したら、ホストに茶器を返すときに「ありがとう」と声をかけ、ホストはこれで客が満足したと判断する。
イェルバ・マテをマテ壷とボンビージャで嗜む歴史は何百年も続いている。健康に良く、元気付けるために飲むイェルバ・マテはマテ壷とボンビージャを使って飲む方法が悦ばしいと考えられていた。マテ壷は友好の証とされ、友人同士の手を渡り、和やかに回される。マテ壷を回しながら考えを共有し、語り合い、一体感を高める。イェルバ・マテは魂をも高揚させてくれる。とかんがえられていた。


マテはバランスの取れた刺激物
マテはカフェインが含まれる植物の一つとして知られるが、それ以上に栄養価が高い植物で、ミネラル、特に鉄分とカルシウムの含有量が高く、ビタミンはAとB(特にB2,B6)を多く含んでいる。葉緑素も豊富に含むことから、通称「飲むサラダ」と言われている所以だ。世界中で最もよく使われている6つの刺激物と言われる、イェルバ・マテ、コーヒー、茶、コーラナッツ、カカオ、ガラナの中でもマテはパワーと栄養の両方を供給できるため、自然界で最もバランスの取れた刺激物と言える。

カフェイン含有量
東邦大学薬学部による2011年の「マテ茶に含まれるポリフェノール,カテキン,およびカフェインの含量分析に関する研究」によると、マテ茶のカフェイン含量は、1.70〜2.04%で、緑茶の56〜67%という報告がある。またブラジルのサンパウロ大学、Bastosほかの2005年の論文『The Chlorogenic Acid and Caffeine Content of Yerba Maté (Ilex paraguariensis) Beverages』(マテ茶飲料に含まれる、クロロゲン酸とカフェイン)に、複数のマテ茶葉とティーバッグを使った分析値が載っている。


引用:http://www.latamjpharm.org/trabajos/24/1/LAJOP_24_1_2_5_8KBZFG0I38.pdf

ブラジル南部のサンパウロ市のスーパーマーケットで店頭販売されている、複数のメーカーの製品(「マテ茶・シマロン(chimarrão)」、「水出しマテ茶・テレレ(Tererê)」、「ティーバッグのお茶(Mate Tea)」)を使って分析してるが、製品によってカフェインとクロロゲンの量にはばらつきがある。淹れ方によっても変わるので、一概にカフェインが多い飲み物と言えるかどうか?確かにハーブティーの中では珍しいカフェイン含有ハーブということになる。

基本、マテ茶のカフェイン含有量が気にされやすいが、前述のとおり、カフェインの使用が気になる方は、水出しの方法で飲まれることをオススメする。
3大ティー、飲むサラダと呼ばれ、食経験の長い、このハーブティーをぜひ健康管理に役立てて欲しい。

その他のマテ茶の成分
マテ茶にはカフェオイル誘導体として、カフェオイル酸、クロロゲン酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸が、フラボノイド類としてケルセチン、ルチンとケンフェロールが、メチルキサンチン類としてカフェイン、テオフィリンとテオブロミンが、そのほかにタンニンやトリテルペンサポニンが含まれていることが明らかにされている。さらにマテ茶に含まれるポリフェノールの総量は、ポリフェノールが多く含まれることで知られている緑茶や赤ワインよりも多い。
このマテ茶の生理作用に関する研究はまだ浅く、活発に行われ始めたのは1990年代の半ばであり、数多くの報告がなされるようになったのはここ数年である。そこで、現在まで明らかにされているマテ茶の主な作用について紹介する。

抗肥満効果
高脂肪食を8週間与えて肥満状態になった動物(マウス)にマテ茶抽出物を摂取させたところ、体重増加が抑制されること、また血清中の中性脂肪やLDL-コレステロールの濃度が減少することが報告されている。
Pang J., Choi Y., Park T., Ilex paraguariensis ameliorates obesity indused by high-fat diet: Potential role of AMPK in the visceral adipose tissue, Arch. Biochem. Biophys., vol. 476, 178-185 (2008)
報告では、高脂肪食の摂取によって誘導される脂肪組織での脂肪合成経路の亢進がマテ茶の摂取により抑制され、その結果、脂肪蓄積の減少を引き起こしていることを示唆した。一方、試験管内での実験において、マテ茶抽出物が脂肪の吸収に重要な働きをする膵リパーゼ活性を阻害することも見出しており、この消化酵素であるリパーゼ活性阻害が動物における体重減少や血清中の中性脂肪やLDL-コレステロール濃度の低下をもたらしたと推測している。さらに、デンマークのCharlottenlundメディカルセンターの肥満研究グループは、マテ茶およびガラナやダミアナなどの植物抽出物の入ったカプセル(112mgマテ茶抽出物、95mgガラナ抽出物、36mgダミアナ抽出物含有)を肥満患者に45日間投与(3カプセル/日)したところ、体重が顕著に減少したことを報告している。【参考文献】4さらに、同様の研究はイギリスのLeeds大学などでも実施され、その効果が確認されている【参考文献】5)。

抗酸化作用、抗動脈硬化作用
マテ茶にはポリフェノールの含有量が多いことから、その抗酸化能は緑茶やワインなどよりも高いことが見出されている【参考文献】6-7)。さらにサンパウロ大学のMatsumotoらは、マテ茶を飲んだ健康な若い女性の血液中のグルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼなどの活性酸素消去系酵素の発現が上昇することを見出している。
Matsumoto R. L., Bastos H. M., Effect of Mate Tea (Ilex paraguariensis) ingestion on mRNS expression of antioxidant enzymes, lipid peroxidation and total antioxidant status in healthy young women, J. Agric. Food. Chem., vol 57, 1775-1780 (2009)
動脈硬化は活性酸素が原因で発症する。動脈硬化を引き起こす要因はLDL-コレステロールの活性酸素による酸化である。マテ茶にはLDL-コレステロールの血漿中の濃度を低下させるという報告【参考文献】9)と、さらにLDL-コレステロールの酸化を抑制する効果のあることも報告されている【参考文献】10)。これらの結果は、マテ茶を日常に飲用することは、酸化ストレスから体を保護することができることを示唆している。

糖尿病に対する作用
高血糖がつづくと糖化産物(AGE)が産生される。このAGE の形成は糖尿病の合併症を引き起こすといわれている。マテ茶はAGE形成を抑制する作用を有することが報告されている。
Lunceford N., Gugliucci A., Ilex paraguariensis extracts inhibit AGE formation more efficiently than green tea , Fitoterapia, vol. 76, 419-427 (2005)

記憶障害に対する作用
マテ茶には認知能力を改善させる効果があると古くからいわれていたが、最近、マテ茶を摂取したマウスを用いたモーリス水迷路試験の結果から、マウスの学習・記憶能力が高まることが明らかにされ、その古くから言われていた効果について実証された。
Prediger R. D. S., Fernandes M. S., Rial D., et al., Effect of acute administration of the hydroalcoholic extract of mate tea leaves (Ilex paraguariensis) in animal models of leaning and memory, J. Ethenopharm. Vol. 120, 465-473 (2008)
さらにマテ茶によるパーキンソン病予防効果の可能性についても報告されている。この研究は、薬剤によってマウスの大脳に障害を与えるパーキンソン病モデルを用いて、マテ茶を摂取すると、その障害が保護されたことを報告している【参考文献】13)。これらの研究は、神経系の障害に対してもマテ茶が有効に作用するであろうこと、またその作用はマテ茶の持つ強い抗酸化作用によることを示唆している。

以上のことから、マテ茶は生活習慣病を予防する効果を有することが期待できる。

(文責 ホリスティックハーブ研究所)

参考図書
「熱帯雨林のハーブ(薬草)の秘密 第2版」Mr.Lwsilie Taylor著
“Yerba mate: compendio de experiencias”, Victor Masloff (2013)
“El libro de la yerba mate”, Karla Johan Lorenzo
「幻の帝国−南米イエズス会士の夢と挫折」伊藤滋子(同成社,2001)
「The Green Pharmacy James A Duke著
「The complete New Herbal Richard Mabey著」
「Botanical Safety Handbook アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集」
「メディカルハーブの辞典 林真一郎編集」
「ハーブの安全性ガイド Chris D. Meletis著」
「薬用ハーブの機能研究 CMPジャパン(株)編集」
「健康・機能性食品の基原植物事典」佐竹元吉ほか著
データベース
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed®

【参考文献】
1) Pang J., Choi Y., Park T., Ilex paraguariensis ameliorates obesity indused by high-fat diet: Potential role of AMPK in the visceral adipose tissue, Arch. Biochem. Biophys., vol. 476, 178-185 (2008)
2) Arcari D. P., Bartchewsky W., dos Santos T. W. et al., Antiobesity effects of yerba mate extract (Ilex paraguariensis) in high-fat diet-induced obese mice, Obesity, vol. 17, 2127-2133 (2009)
3) Martins F., Noso T. M., Porto V. B. et al., Mate tea inhibits in vitro pancreatic lipase activity and has hypolipidemic effect in high-fat diet-induced obese mice, Obesity, vol. 18, 42-47 (2010)
4) Andersen T., Fogh J., Weight loss and delayed gastric emptying following a South American herbal preparation in overweight patients, J. Hum. Nutr. Dietet., vol. 14, 243-250 (2001)
5) Ruxton C. H. S., Kirkwood L., MaMillan, B., Effectiveness of a herbal supplement (ZotrimTM) foe weight management, British Food Journal, vol 109, 416-428 (2007)
6) Bixby M, Spieler L, Menini T. et al., Ilex paraguariensis extracts are potent inhibitors of nitrosative stress: A comparative study with green tea and wines using a protein nitration model and mammalian cell cytotoxicity, Life Sicences, vol. 77, 345-358 (2005)
7) Dudonne S., Vitrac X., Coutiere P., et al., Copmarative study of antioxidant properties and total phenolic content of 30 plant extract of industrial interest using DPPH, ABTS, FRAP. SOD. And ORAC assays, J. Agric. Food Chem., vol. 57, 1768-1774(2009)
8) Matsumoto R. L., Bastos H. M., Effect of Mate Tea (Ilex paraguariensis) ingestion on mRNS expression of antioxidant enzymes, lipid peroxidation and total antioxidant status in healthy young women, J. Agric. Food. Chem., vol 57, 1775-1780 (2009)
9) De Morais E. C., Stefanuto A., Klein G. A. et al., Consumption of Yerba Mate (Ilex paraguariensis) improves serum lipid parameters in healthy dyslipedemic subjects and provides an additional LDL-cholesterol reduction in individuals on Statin therapy, Agric. Food Chem., vol. 57, 8316-8324 (2009)
10) Gugliucci A., Stahl A. J. C., Low-density-lipoprotein oxidation is inhibited by extracts of Ilex paraguariensis, Biochem. Mol. Biol. Int. vol. 35, 47-56 (1995)
11) Lunceford N., Gugliucci A., Ilex paraguariensis extracts inhibit AGE formation more efficiently than green tea , Fitoterapia, vol. 76, 419-427 (2005)
12) Prediger R. D. S., Fernandes M. S., Rial D., et al., Effect of acute administration of the hydroalcoholic extract of mate tea leaves (Ilex paraguariensis) in animal models of leaning and memory, J. Ethenopharm. Vol. 120, 465-473 (2008)
13) Milioli E.M., Cologni P., Santos C.C. et al., Effect of acute administration of hydroalcohol extract of Ilex paraguariensis St Hilarire (Aquifoliaceae) in animal models of Parkinson’s disease, Phytotherapy Res., vol. 21, 771-776 (2007)
14) De Stefani E., Fierro L., Mendilahasu M., et al., Mate intake, ‘mate’ drinking and renal cell cancer in Uruguay: a case-control study, Bri. J. Cancer, vol. 78, 1239-1243 (1998)
15) Goldenberg D., Mate: a risk factor for oral and oropharyngeal cancer, Oral Oncol., vol. 38, 646-649 (2002)
16) Bates M. N., Hopenhayn C., Rey O. A. et al., Bladder cancer and mate consumption in Argentina: A case-control study, Cancer Lett., vol. 246, 268-273 (2007)
17) Loria D., Barrios E., Zanetti R., Cancer and yerba mate consumption: a review of possible associations, Revesta Panamericana De Salud Publica-Pan American J. Public Health, vol. 25, 530-539 (2009)
18) Ramirez-Mares M. V., Chandra S., de Mejia E. G., In vitro chemopreventive activity of Camellia sinensis, Ilex paraguariensis and Ardisia compressa tea extracts and selected polyphenols, Mut. Res., vol. 554, 53-65 (2004)

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