色変化を楽しむ粘液ハーブティー〜ウスベニアオイ(マローブルー)

アイキャッチ

色変化を楽しむ粘液ハーブティー〜ウスベニアオイ

ウスベニアオイ(マローブルー) Mallow blue

マローブルー(ウスベニアオイ)は、粘液質を多く含み、古くから風邪による喉の痛みや、咳、肌ケアなどにもちいれられてきました。

学名:Malva sylvestris (マルバ・シルヴェストリス)

和名・別名:ウスベニアオイ・コモンマロウ

科名:アオイ科

使用部位:花部


leaf3_mini 植物分類と歴史

ウスベニアオイは高さ約2mにもなる植物で葉身は長さ6〜8cmで濃い青紫色の5枚の花弁が特徴です。多年草ハーブでヨーロッパを原産とし、5月〜6月の開花時に葉と花が採取され、生の若葉と花はサラダにミックスして野菜のように使われることもあります。英名ではコモンマロウまたはマロウブルーと呼ばれます。

濃い紫色をしている花の色はアントシアニンによるもので、マロウの花で入れたお茶は鮮やかな青色で美しく、レモンのような酸を加えると薄ピンク色に変わるため「サプライズティー」としても有名なハーブです。

ウスベニアオイの多様な効能から、スペインでは「家庭菜園とウスベニアオイ、それだけあれば、家庭用の薬には十分である」ということわざが残されているとか。また一般名であるmallowは「柔らかいもの」または「柔らかにする」を意味するラテン語のmalva(マルバ)に由来し、これは植物自体が持つ粘液に緩和剤の効果があるということに由来していると考えられています。

日本では江戸時代に伝来してきたといわれています。
和名のウスベニアオイは「薄い花びらの紅葵」という意味で五弁の淡紅色の花弁の様子に由来するそうです。同種にゼニアオイ「M.sylvestris var.mauritana」がありますが、これはウスベニアオイの亜種で見た目はとても似ています。この果実は中央が少しへこみ、ドーナツのような形をしているため、その姿を銭に見立てて「ゼニアオイ(銭葵)」と名がついたと言われます。

ウスベニアオイの歴史

ウスベニアオイはヨーロッパを原産としアオイ科の中でも最も古い歴史を有する薬用植物のひとつで、紀元前8世紀頃から食用とされていたと考えられています。古代ギリシャの時代には茎や葉はサラダとして利用されてきました。古代ギリシャの医者で薬理学と薬草学の父と言われるディオスコリデスが著した薬物誌『マテリア・メディカ』の中には、「Malache Agria」という植物として登場し、内臓や皮膚に対するさまざまな作用や多くの用途が書かれています。

ローマ時代には薬草あるいは野菜として栽培され、紀元800年に西ローマ帝国を築いたカール大帝はこのハーブを「領内の畑や庭に植えよ」というお布令を出したというほど重用し、特に呼吸器系の病気に薬効があるとされていました。

16世紀には万能薬を意味するオムニモルビア(omnimorbia)と名付けられました。この名前は緩やかな瀉下作用をもつウスベニアオイが、便通を良くすることで体の病気を取り除くと考えられていたことに基づくそうです。また古代アラビアの医師は消炎のために葉を用いたといわれています。


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

ウスベニアオイの食経験と機能性

根や花には豊富な粘液質を豊富に含む(10%)ハーブとして知られており、風邪による、のどの腫れや痛み、胃炎、膀胱炎、尿道炎などの粘膜保護のために用いられ、また神経を穏やかにする働きがあるためせきや気管支炎などの呼吸器系の症状に働きかけます。

粘液質は体内の粘膜を覆い、粘膜を保護し傷ついた粘膜の修復を促す効果があります。この効果から古来より風邪による、のどの腫れや痛み、胃炎、膀胱炎、尿道炎などに粘膜を保護し、修復を促すものとして使用されてきた歴史を持ちます。

中世ヨーロッパではオペラ歌手が喉をティーで潤し、粘膜保護をして舞台に立ったと言われます。そのほか外用として湿布剤やローション剤、パック剤として外傷や皮膚炎に用いられています。さらにタンニンを豊富に含む葉は消炎のために湿布薬として使用されることもあったようです。

(文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所)


参考文献(書籍)

「ハーブの歴史」ゲイリー・アレン著
「基本ハーブの事典」北村佐久子著 東京堂出版
「中世の食生活」B・A・ヘニッシュ著 藤原 保明 訳
「中世ヨーロッパの生活」ジュヌヴィエーヴ・ドークール著 大島誠訳
「健康・機能性食品の基原植物事典」佐竹元吉ほか著
「メディカルハーブの辞典」 林真一郎編
「Botanical Safety Handbook」 アメリカハーブ製品協会(AHPA)編
「The complete New Herbal」 Richard Mabey著
「The Green Pharmacy」 James A Duke著

データベース・公文書等
NIH National Library of Medicine’s MedlinePlus
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳

関連記事

  1. ビタミン Cだけではない!ダシと旨味の隠し技〜ローズヒップ

  2. 目を癒すめがねの壊し屋〜アイブライト

  3. マリア様のハーブで脳を若返り〜ローズマリー

  4. アイキャッチ

    アレジーだけではないぞ!栄養価の高いデトックスハーブ〜ネトル

  5. ヒポクラテスってどんな人??

  6. 世界五大人参の一つ、そのパワーは朝鮮人参の6倍!

最近のコメント

    過去の記事検索

    error: Content is protected !!