目を癒すめがねの壊し屋〜アイブライト

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アイブライト〜目を癒すめがねの壊し屋。嘘すら見抜けるアイケアハーブ

アイブライト Eyebright

アイブライトはその名の通り、目がきれいに輝くようになることから、その名前がつけられました。

学名:Euphrasia officinalis (エウプラシア オフィキナリス)

和名・別名:こごめ草

科名:ゴマノハグサ科

使用部位:葉部


leaf3_mini 植物分類と歴史

アイブライトは綿毛に覆われた半寄生植物で、やせた牧草地や荒地でイネやスゲ、カヤツリグサ科の植物の根に依存し、根から養分を補給して成長する植物だ。一年草で、だ円形の葉の周囲には歯状突起があり、盛夏から晩夏にかけて咲く花の心弁は黄色く、充血した目のような赤か紫の筋が通っている。このこともアイブライトの名前の由来のひとつらしい。丈は20cmくらいの小さな植物で、鮮やかな緑色をした楕円形の葉の周囲には、歯状突起があり、盛夏から晩夏にかけて白あるいは黄味がかった薄紫色の花を咲かせる。原産地はヨーロッパで、アジア西部や北アメリカでも見ることができる。

昔は道ばたによく生えていて雑草扱いの地味な草で「コゴメグサ」という和名を持つ。このコゴメグサは、米粒ほどの小さな花という意味に由来し、日本では主に7種あり、多くの変種に分けられる、コゴメグサ属の種類の総称として使われるが、ミヤマコゴメグサなど地域変異が多くて区別がむずかしく、明治以前はどの種もひとまとめにコゴメグサとよんでいたようだ。
学名(Euphrasia officinalis)は、ギリシャ神話の「三美神(カリテス)」の一人喜びの女神エウプロシュネに由来して名づけられたとされる。三美神は全能の神ゼウスの娘達のことだが、エウプロシュネ(祝祭、喜び)、タレイア(花盛り)、アグライア(光輝)の3姉妹は愛と美と生殖の女神アフロディテの侍女として仕え、神々の宴で優美な輪舞を披露するのが仕事だった。ボッティチェッリやラファエロ、カノーヴァなどなど多くの絵画や彫刻のモチーフになっていることでも有名だ。ちなみにカリテスはカリス(女神)の複数形、ギリシャ語で神の恵みとか恩恵を意味し、現代でも使う「カリスマ」の語源でもある。アイルランド地方には「盲目の少女が毒草に触れそうになった時、エウプロシュネがとっさに魔法を使って目が見えるようになる薬草に変えた」という言い伝えがあるそうだ。
また古代ギリシャの植物学の父テオフラストスが眼感染症の外用の浸剤として処方していたとの記録が残されている。さらに医学の父ヒポクラテスや、ちょっと若い薬物学の父ディオスコリデスも「目にはアイブライト!」と記している。ちなみにテオプラストス、本名はティルタマス。学者仲間だったアリストテレスとプラトンが彼の理路整然とした弁論術を称えて神(テオ)のごとく語る(プラストス)という意味でつけたニックネームだった。当時の著名な学者達は皆、「あだ名」や「ペンネーム」で活動していたようで、あだ名を付けたアリストテレス本人もそもそも本名ではなかったようだ。(余談ですが。)
さらに中世になってヒルデガルドの紹介で今日まで民間薬として使われるようになっていった。ヒルデガルドは修道院の中でハーブを育てそれを使って人々を癒していた薬草師でもあった。彼女はアイブライトの花の特徴が、充血した目の様子に似ていることから、この植物に注目したようだ。おもに目の外用の浸剤として使用していたようだ。現在でも欧州各地で目のかゆみ、結膜炎、眼瞼炎、花粉症、そして内服すると糖尿病などにも有用であるとされ、民間療法で活用されている。

leaf3_mini 成分ほか

アウクビン、タンニン、サポニン、パントテン酸、イノシトール、ビタミンA・C・D・Eなど各種ビタミン、 カルシウム、ヨウ素、マグネシウム、マンガン、ケイ素

leaf3_mini安全性と相互作用

安全性クラス : 1(適切に使用する場合、安全に摂取することができるハーブ)
相互作用クラス: A(臨床的に関連のある相互作用が予測されないハーブ)
(Botanical Safety Handbook 2nd edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)

leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

太古よりアイブライトは心を研ぎ澄まし霊力を高めるハーブと考えられ、目を閉じて抽出液を浸した布を瞼に載せると相手の嘘を見抜けると信じられていた。
成分としては、アウクビンなどのイリドイド配糖体とケルセチンやアピゲニン、タンニンなどのフラボノイド類の成分が含まれる。アウクビンは炎症を抑える作用があり、結膜炎などの眼疾患を予防する効果を持つ機能性成分だ。この抗炎症作用は 炎症の痛みを鎮静させる成分である「インドメタシン」に匹敵するほどの炎症を緩和する働きがあると言われている。

アウクビン

最近では花粉症による鼻水、涙目などのカタル症状の緩和にも有用とされ、また抽出エキスには、皮膚の湿潤作用や保護作用及び収斂作用や抗炎症作用があることから、スキンケア用品にも用いられている。そのほかアウクビンのアグリコンである「アウクビゲニン」の黄色ブドウ球菌などの菌に対する抗細菌作用、 カンジダ・アルビカンス等に対する抗真菌作用、そしてアウクビンによる肝臓機能促進、保護する働きも期待されている。

かつてイギリス植物療法の父カルペパーは「もしアイブライトがもっと利用されれば、眼鏡屋の半分は倒産していただろう」と書き残し、フランスではCasse Lunette「めがねの壊し屋」ともいわれ、14世紀の医学書にはすべての眼病に効果があると記されており、ロシアの民間療法でも疲れ目の治療薬として使われていた。このように欧州では目のあらゆる疾病に有効なハーブとして認識され、結膜炎や眼瞼炎、麦粒腫の外用治療薬として利用されていた歴史を持つアイケアハーブなのである。

ところで、古代の医療から中世まで多くの医学の父と呼ばれる人たちが、ハーブを使う根拠としていた理由の一つに「植物の色、形、生育場所などが、似た臓器や作用に関係がある」という説がある。例えば植物の花は、種の保存のため鳥や昆虫を呼び寄せる香り(芳香成分)を作り出した。人間も花に魅了されるように、植物の香り成分は情動に影響を及ぼす。また葉や茎は人間の動脈・静脈にあたり、体の代謝に関与する成分が植物の葉や茎に含まれる。さらに根は植物の貯蔵庫であり、根に含まれる成分は、人の滋養強壮に関するというように、植物の部位と人間の器官を対比させて、それを治療に生かすという考え方である。科学が未発達な時代、アイブライトも白い花びらの中に黄色の斑と紫色の脈が浮かんでいる様子が、疲れて血走った目に似ていることから目を癒す効果を与えられていると考えられていたのだ。
この「見た目の特徴と効能」の考え方は、16世紀初頭、医師で錬金術師であるパルケルススDoctrine of Signature(象形薬能論)として確立した理論の中で、「神はあらゆるハーブの姿形にその作用や効能を表すヒントを標し与えているのだ」と、一般民衆にわかりやすい言葉で植物と化学が結び付けた背景による。   また漢方にも植物と人体を結びつける「相似の理論」という似た考え方があり、現代人としては化学的にどうなのかな?と疑問を感じたりもするが、なんとなくわかる気がする。実際にハーブを学ぶとあながち、的外れでもない。

確かにアイブライトの葉には消炎効果、収斂効果、毛細血管を強化し、血流を改善する効果、強力な抗酸化作用がある成分が確認されていて、目だけでなく鼻や喉のカタル症状にも使われている。ここは賛否両論あると思うが、夢見がちな私としては、植物の偉大さの一つとして共感してしまうのである。アイブライトは、まだまだ安全性や毒性に関する科学的な情報が不足しているハーブだが、古くからの使用経験があり、外用、内用ともに利用経験が多いハーブでもある。
以下にアイブライトの機能性をご紹介しておく。

●目の健康維持
自然療法では積極的に外用でも利用されている。例えば欧州では目の疲れや炎症がでた時などは、アイブライトの抽出液で目を洗うと効果があるといわれてきた。さしずめ「○イボン」的使い方だろうか。
またハーブティとして飲んでも同様の効果が得られるとされる。さらに花粉により引き起こされるアレルギー症状や結膜炎にも効果を発揮する。
学術報告としては、炎症性結膜炎患者またはカタル性結膜炎患者65名を対象に、アイブライト点眼液を14日間にわたり1日1~5滴点眼したところ、53名が完治し11例に改善が見られたことから、アイブライトの結膜炎予防効果が期待された報告がある。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11152054)
また結膜炎患者を対象に、アイブライト点眼液を点眼した試験の結果、81.5%が完治し、17.0%に改善が認められた。このことにより、アイブライトの点眼は眼の健康に有用である可能性が示唆されたという報告もされている。(Stoss, Matthias, et al. Prospective cohort trial of Euphrasia single-dose eye drops in conjunctivitis. The Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2000. P. 499-508.)
ただし眼の治療をしている場合、外用で使用する際には、きちんとした殺菌が行われなければ、眼感染症のリスクが伴う場合があるため十分な注意が必要だ。アイブライトによる洗眼などの外用利用は欧州でも国によって見解が異なる。イギリスでは一般的な小売店で販売される医薬品として認められている反面、ドイツのコミッションEは安全性や有用性が証明されていないとして承認していないと、外用に関しての考え方も賛否両論なので外用の場合は自己責任で。

●アレルギー症状緩和
アイブライトはアレルギー対策ハーブとしても知られている。前述の学術報告にもある通り炎症を抑える働きが報告されているため、目の炎症にも有用だと思われる。さらに成分のひとつケルセチンは毛細血管を強化し血流を改善する効果を持つほか抗炎症作用を持ち、アピゲニンとともに強力な抗酸化力で知られる。目のかゆみや疲れ目、花粉症や感染症などに有用だ。目の痛み、炎症、涙目、目の疲れによる頭痛、目のかゆみにも役立つ。自然療法ではアイパックとして使用するのも効果的とされ、粘膜に働きかけるので、鼻水や鼻づまり、喉の痛みといった花粉症・風邪の症状にもよいと利用されている。

●肝臓の保護に
アウクビンは皮膚の湿潤作用や保護作用及び収れん作用や抗炎症作用がみ止まれられている。他にもこのエキスは、肝臓の働きが活性化されることも知られている。東洋医学では「肝は目を穿つ」のように肝臓と目は密接な関わりを持つ臓器と考えられており、アイブライトが目に良いと言われるのも肝機能の向上によって目の疲れや機能低下を改善するとも言われている。
学術報告では糖尿病ラットを対象に、アイブライト葉部抽出物を投与したところ、血糖値の上昇が緩和されたという報告がある。一方正常ラットにおいては、血糖値降下作用や低血糖作用は生じなかったことから、アイブライトには糖尿病予防効果が期待されている。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11449500)

ところで中世当時の詩や小説にはアイブライト入りの白ワイン、紅茶、シチューを飲むシーンが出てくる。不朽の傑作と謳われたイギリスの一大叙事詩「失楽園」の中では、禁断の実を食べて楽園を追われ失明したアダムに対し「大天使ミカエルはアダムの眼をアイブライトとルー(香りが強いミカン科の植物)で洗い流し光をとり戻させた」とある。食材としてはあまり馴染みがないアイブライトだが、薬草酒としての利用はたまに文献に出てくる。16世紀後半のイギリスはエリザベス1世の時代にアイブライト・エール(ビールの一種)が飲み物として流行したという記録もある。

<海外のアイブライト関連サプリメントの現状>
さてサプリメント素材としてみてみると、目のためのサプリメント原料としてよく使用されている。もちろん単独でサプリメントとして販売されているものもあるが、相乗効果を狙ってルテインやブルーベリー、カシス、イチョウ葉エキス、ラズベリーエキスなど目に良いとされている素材と組み合わせたサプリメントとして販売されているものも多い。またアレルギー系のハーブであるネトルやエルダーフラワーと組み合わせたエキスやチンキ等で販売されている。その他機能性成分として、アスタキサンチンとの目のピント調整力、アントシアニンの目の酸化予防、ルテインの黄斑保護機能、クロセチンと眼精疲労や血流改善、DHAと視力サポートなどなど、関与成分の補完素材としても活用されている。国内でもその傾向は同じだ。

参考図書
「魔女の薬草箱」西村佑子著 山と渓谷社
「基本ハーブの事典」北村佐久子著 東京堂出版
「パラケルススと魔術的ルネサンス」菊地原洋平著
「カルペパー ハーブ事典」ニコラス・カルペパー著
「ハーブティーブレンドレッスン」ハーブティーブレンドマイスター協会編集
「The Green Pharmacy James A Duke著
「The complete New Herbal Richard Mabey著」
「Botanical Safety Handbook アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集」
「メディカルハーブの辞典 林真一郎編集」
「ハーブの安全性ガイド Chris D. Meletis著」
「薬用ハーブの機能研究 CMPジャパン(株)編集」
データベース
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed®

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