ヒースランドの秘薬は命を支える美白ハーブ〜エリカ

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母なる大地を作り、命を支える美白ハーブ

エリカ/ヒース Erica/Heath

学名: Calluna vulgaris (カルーナ ヴェルガリス)

和名・別名:ぎょりゅうもどき〔御柳擬〕、スコッチフェザー

科名:つつじ科

使用部位:花部


leaf3_mini 植物分類と歴史

エリカはヨーロッパ原野に普通に見られ、特にイギリス、スコットランドでは、ヒースランドと呼ばれる広大な荒れ地一面に生い茂っています。古来より屋根を葺いたり、ベッドの代用となったり、根をパイプの原料にしたり、あのスコッチウイスキーの原料になったりと、人々とのかかわりが非常に強い植物とされてきました。ピンクのきれいな花は染料としても使われてきました。学名Callunaはギリシャ語Kallunein(掃く)に由来しています。
ヒースは古代ゲルマン語のHaithio、ドイツ語では「荒野、荒地」を意味するHeideハイデと語源が同じです。

7〜10月にピンク色の花を咲かせる常緑低木で、ヨーロッパから西アジアに分布しています。可愛らしいピンクの花をつけるので園芸種としても大変人気があり、品種改良も盛んに行われ現在は1000種以上あると言われます。ヨーロッパでは古くから燃料や飼料、染料、お茶など、日々の暮らしのなかで使われている身近な植物です。

ヒースと聞くと、イギリス文学に造詣の深い方は、エミリー・ブロンテ作の「嵐が丘」の主人公ヒースクリフ(Heathcliff)を思い浮かべるかもしれない。古来より農民の生活に役立つ樹木として、屋根を葺いたり、ベッドの代用となったり、根をパイプの原料にしたり、あのスコッチウイスキーの原料になったりと、人々とのかかわりが非常に強い植物であった。またピンクのきれいな花は染料としても使われてきた。学名Callunaはギリシャ語Kallunein(掃く)に由来し、この語は(to clean or brush)を意味する。小枝で箒が作られたことに因るという。ツツジ科(Ericaceae)のカルーナ属(Calluna)は、Calluna vulgarisのみである。またヒースは古代ゲルマン語のHaithio、ドイツ語では「荒野、荒地」を意味するHeideハイデと語源が同じだ。この語の意味は、「痩せた酸性度の土壌に生育する亜低木、亜灌木のこと。又その土地。」と辞書にはある。

またヒースは、ヘザーと呼ばれることもあり、正確にはスコットランドのヒースは、スコッチヘザーと呼ばれ、アフリカ原産のヘザーとは異なる。ヘザー(Heather)は、ヨーロッパやアフリカ原産のツツジ科の植物で、ヒース(エリカ属)によく似ているため、ヒースとして扱われることも多い。ヒースが約630種あるのに対して、ヘザーは1属1種である。英名ではエリカのことを「ヒース」(heath)、カルーナ属を「ヘザー」(heather)と区別している。南アフリカのヘザーは、暑さには強いが、冬はやや弱い。ケープ州に集中していることからケープ・ヒースと呼ばれている。「嵐が丘」に出てくるエリカ(スコッチヘザー)は、当然ヨーロッパ原産である。


●ヒースの歴史
これらの低灌木が、上の写真にみるような、薄紫色の美しい花を丘陵地一面に咲かせ、人々の暮らしの中では安らぎ与え、時には、家畜の大切な餌となり、その地域に棲む昆虫の蜜源(蜂蜜の花でもある)となり、爬虫類や鳥類などの食物連鎖と棲家の生きる基盤の核となっている。ヒース群落は、そこに棲む多種多様な生物社会の食物連鎖や棲家として、生きる基盤を数百年の歳月の中で、厳しい自然と闘いながら、そこに根付き作り上げてきたのだ。もちろん、人間もその生物社会のひとつとして、暮らしを成立させてきた。このヒースが枯れて大地となり、100年以上かけてピートという泥炭になる。

ピートはウイスキーづくりには欠かせない燃料で、モルトを乾燥させるときにこのピートを燃やし、ピートの臭いをウイスキーにつける。ヒースからできたピート(泥炭)の層を雪解け水が透り、浄化されて川の水となる。この川の水が美味しいことからも、ハイランドの川沿いにたくさんの蒸留所ができたのだそうだ。

ところで、昔流行ったサイモンとガーファンクルの美しい輪唱の歌に「スカボロー・フェア」というスコットランドの民謡をアレンジした曲がある。
ちょっとだけ紹介させて欲しい。
この歌のオリジナルは古くからスコットランドで歌われていた「エルフィン・ナイト」という民謡といわれ、これが歌い継がれてゆくうちに様々に変化して18世紀末には多くの歌詞が伝えられたとされる。実はこの歌の中身がとても奥深くて、またその背景にヒースランドの荒涼とした大地の物悲しさと去っていった恋人をひたすら待ち続ける哀れな男の悲哀を植物たちが優しく包んでいくという、なんとも物悲しく、かつ脈々と続く永遠の大地のようなケルトらしい自然観が見事に表現されているのだ。その歌詞の中に、「parsley, sage, rosemary and thyme(パセリ、セージ、ローズマリー、タイム)」と4つの古くからケルトに伝わるハーブがおまじないのように何度もキーフレーズとして登場するのだが、最後にそれらのハーブを包んで全てをヒースの束にまとめるというフレーズが出てくる。
それは、恋人をひたすら待ち続ける男が抱く、おまじないであり、そうすることで、「去っていった彼女は僕の本当の恋人になるだろう・・」というなんとも女々しい歌でもあるのだ。当時若い娘の窓の下に、その恋人がヘザーの枝をおくと、それは恋愛の終りを告げることだったらしい。男がヘザーの束を作ったのは、その裏返しで彼女に戻ってきてほしかったからかもしれない。

なぜ、4つのハーブなのかは諸説あるが、これらのハーブは当時異教徒の間では「恋の妙薬」とされ、また一説にはペストの流行と関係あるとも言われている。中世ではペストで死んだ人間の臭いが感染の原因であると考えられ、これらの臭いを消すために“parsley, sage, rosemary, thyme”といった抗菌作用の強いハーブが使われた。そのハーブたちをひっくるめて包めるのがヒースの枝だ。ヒースは大地の母でもあるのだ。きっと。(実際にハーブティーのヒースは、単体で飲むとほのかな桜餅のような風味がして個性があるのだが、例えば苦い味や匂いが強いハーブとブレンドしたら、不思議と嫌なハーブの癖を綺麗に包み込んで、見事にまとめてくれるハーブなのだ。なんとも不思議だ。)

さらにこの歌が世界的に有名になった理由の一つが、サイモンとガーファンクルの美しい歌声の輪唱の背景に流れるもうひとつの歌、反戦歌だ。女々しい男の儚さと重なるように、人を殺し続ける兵士の虚しさを歌で紡いでいるのだ。ちょっと輪唱の一節を記しておく。私なりの和訳です。(かっこは輪唱部分)

♫ 彼女に伝えてくれ 革の鎌で刈りとるようにと
(戦いの大砲が鳴り響き 緋色の服をまとった大群は炎に包まれる)

パセリ、セージ、ローズマリー、そしてタイム
(将軍は兵士達に「殺せ」と命令する)

そうして全てをヒースの束にまとめたら、

(とっくに忘れてしまった戦う理由 それでも「戦え」と命ずる)

そうすれば 彼女は僕の本当の恋人になるだろう。

スカーボロウ・フェアに行くのかい?

パセリ、セージ、ローズマリー、そしてタイム

そこに住んでいる人によろしく伝えてくれ

彼女はかつて僕の恋人だった・・ ♫

ヒースとはこういった諸行無常を包み込む永遠さがあるのかもしれない。ぜひ知らない人は聞いて欲しい。そういえば、「戦争と平和」(トルストイ)では、ヒースという荒野があるために、その灌木に身を潜め敵の行動を見張る兵士の緊張感が伝わるシーンがあった。植物というのは、人の悲哀と人生に不可欠な存在なのかもしれない。


スカボロウの町
*ちなみにスカボロウ・フェアとは、北海に面した町スカボロウで開かれる市場(フェア)のこと。中世より交易の拠点として重要な地点であった。13世紀半ばより毎年8月15日から45日間にわたって開かれる市には英国国内はもとよりノルウェー、デンマーク、バルチック諸国、東ローマ帝国からの商人が訪れていた。


leaf3_mini 成分ほか

アルブチン、フラボノイド(クエルシトリン)、タンニン、クエン酸など

leaf3_mini 安全性基準

特に報告なし
(Botanical Safety Handbook 2nd Edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)未収載)


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)
なんといってもヒースには美白成分で知られるアルブチンが含まれているハーブとして知られている。
アルブチンはフェノール配糖体の一種として、ツツジ科、バラ科、ユキノシタ科などに属する植物に広く存在することが知られ、低毒性で優れた生理活性を有していることより、近年ますます注目されてきている物質である。
例えば、ツツジ科のウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)には アルブチンが主成分として5〜7.5%含まれ、その抗菌性を利用して抗生物質が出現するまで泌尿器疾患の消毒薬として繁用されていた。また、アルブチンのメラニン色素抑制作用が見出され、安全性の高い皮膚美白化粧料の有効成分として利用されている。

ヒースもウワウルシほどではないが、ツツジ科のコケモモ(Vaccinium Vitis-Idae a)同様、4%程度含まれていることが知られている。またバラ科ナシ属(Pyrus communis)にも数%程度含まれている。
アルブチンには糖の結合の違いにより、α-とβ-があり、一般に使用されるのはβ-アルブチンだが、ヒースに含まれるのは美肌効果の高いα-アルブチンだ。α-アルブチンはβ-アルブチンの約10倍近くのメラニン抑制効果があるとされる。アルブチンはハイドロキノンに糖が結合したハイドロキノン配糖体で、このハイドロキノンは「肌の漂白剤」とも呼ばれ、美白剤として医薬部外品に認定されている。皮膚科などで処方される他、薬局などでもハイドロキノン配合の軟膏やクリームが販売されている。

アルブチンは、ハイドロキノンと同じく美白効果を持ち、メラニン色素の合成に関わる酵素であるチロシナーゼの働きを阻害するため、メラニン色素自体の生成を抑制する。特にα-アルブチンはヒースや梨などの植物に含まれており、β-アルブチンはウワウルシに含まれている。歴史的にはβ-アルブチンの方が長く、どちらも美白成分であることには変わらないが、α-アルブチンの方がβ-アルブチンより優れた効果を発揮することが近年の研究により明らかとなってきた。

α-アルブチンの働き
α-アルブチンには、チロシナーゼに対する阻害効果がある。β型アルブチンは、マッシュルームおよびヒト培養細胞由来の両方のチロシナーゼを阻害し1)、またヒトのチロシナーゼのみを選択的に、かつβ型アルブチンより10倍以上、強力に阻害する2)ことが確認されている。
1) M. Funayama et al., Biosci. Biotech. Biochem. 59, 143-144 (1995)
2) K. Sugimoto et al., Chem. Pharm. Bull. 51, 798-801 (2003)
正常ヒト皮膚3次元モデルを用いたメラニン生成抑制3)4)5)についても報告があり、α-アルブチンは、皮膚細胞の損傷なくメラニン生成を抑制するほか、α-アルブチンのメラノサイト中でのメラニンの生成抑制が確認されている。α-アルブチンの投与を中止するとメラニンの生成能が回復し、コントロールとの比較においてもα-アルブチン投与群での生細胞数減少の抑制が分かっている。3)K. Sugimoto et al., Biol. Pharm. Bull. 27, 510-514 (2004)
「酵素法によるα-アルブチンの生産と応用」(日本語)西村隆久, バイオサイエンスとインダストリー 61, 259-260(2003)
4)「美白化粧品素材α-アルブチンの紹介」(日本語)杉本和久, J. Appl. Glycosci. 50, 109-110(2003)
5)「ハイドロキノン配糖体のチロシナーゼ阻害効果およびα-アルブチンのメラニン生成抑制効果」(日本語)杉本和久ほか, FRAGRANCE JOURNAL 33, (5) 60-66(2005)


●美白の歴史
アルブチンは1989年に厚生省(現厚生労働省)が、美白の効果・効能を認定した「医薬部外品」の美白成分として認められたことで、一躍注目を浴びた。
美白成分とは、メラニンの生成を抑制する、表皮のターンオーバーを促進させてメラニン色素の排出を促すという効果がある成分のことをさす。古くから美白の意識は高く持たれており、984年に日本最古の医学書『医心方』が丹波康頼によって記され、「色をよくする方」では、肌を白くする具体的な方法が紹介されている。これが美白に関する最古の記述であるといわれている。江戸時代になると美白文化が一般的になり、町民の間でも色白が美しいと考えられるようになった。
明治時代に入ると、紫外線防止の研究が進み、1894年には日本最古の美白化粧品が発売され、その後大正時代の1917年には漂白するという考え方により、つくられた化粧品が大ヒットした。昭和に入り、化粧水やクリーム、日焼け止めなどが続々と発売され、美白コスメが進化して行くことになる。1950年代には日焼け止めの発売ラッシュが続き、1980年には日焼け止めのSPF表示が話題となった。このように美白に対する意識は、古くから日本に根付いており、アルブチンやハイドロキノンなどの美白成分が明らかになるとともに、大きく注目を浴びるようになり、化粧品などに多く配合されるようになっていった。

●ヒースのその他の機能性
ヒースの花の部分には、ミネラルが豊富に含まれ、これを入れたティーには、抗菌、収れん、利尿作用があるため、古くから自然療法として尿道炎や膀胱炎といった泌尿器系の感染症を緩和するのに利用されてきた。例えば尿路疾患を有する患者に対してアルブチンを飲用させ、アルブチン摂取群では、大腸菌、ミラビリス菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、他70種類の尿路感染の原因菌が抑制されたという報告もある。また多すぎる尿酸を取り除き、リウマチや痛風、腎臓の機能不全にも有用とされ、入浴剤としても活用されてきた歴史もある。さらにヒースは蜂蜜の取れる植物として、古くスコットランドの人々の生活を支えてきた。

ヒースのハチミツの機能性としては、泌尿器の消毒作用、利尿作用、腸の感染症対策などに有効性が認められている。
映画「嵐が丘」の舞台になった英国ヨークシャーの荒野に群生している灌木の多くは、カルーナ属のブルガリス種(Calluna vulgaris)である。ヨークシャーはヘザー・ハニーの産地としても有名である。ハチミツには、蜂が花の蜜を吸ってハチミツになる一般的なものと、サプリメントとしての機能性ハチミツがある。特にヨーロッパでは、機能性ハチミツ市場がある。蜂にハーブエキスを食べさせ(蜜を取るだけではなく、エサとしてハーブエキスを食べさせる)、そのハーブの成分を蜂が代謝することで、人が吸収しやすい形に変化するという機能性ハチミツだ。ついでに紹介しておく。例えば更年期障害用ハチミツとかホルモンバランスを整えるハチミツとか様々なメーカーが販売しているので、もし見かけたら試してみてほしい。

(文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所)


参考図書
「ハーブの歴史」ゲイリー・アレン著
「マリー・アントワネットの植物誌」エリザベット・ド・フェドー著 
「イギリスとアイルランドの昔話」石井桃子編訳
「中世の食生活」B・A・ヘニッシュ著 藤原 保明 訳
「中世ヨーロッパの生活」ジュヌヴィエーヴ・ドークール著 大島誠訳
「メディカルハーブの辞典」 林真一郎編集
「ハーブティーブレンドレッスン」ハーブティーブレンドマイスター協会編集 
「The Green Pharmacy」 James A Duke著
「The complete New Herbal」 Richard Mabey著
「Botanical Safety Handbook 2nd edition」 アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集
「Fifty Plants that changed the course of History」 Bill Laws著

参考データベース&論文
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ編(独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed(パブメド)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19387580
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18837701
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15056856
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/240095

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