人間界と魔界をつなぐ秘密の扉 ニワトコの木〜エルダー

魔女の秘薬で抗アレジー対策〜エルダーフラワー

エルダーフラワー Elder flower

エルダーフラワーは「インフルエンザの特効薬」悪魔から守ってくれるハーブです。

学名:Sambucus nigra (サンブクス ニギラ)

和名・別名:セイヨウニワトコ

科名:レンブクソウ科(スイカズラ科)

使用部位:花部


leaf3_mini 植物分類と歴史

エルダーは一般的にヨーロピアンエルダーを指します。

スイカズラ科の植物でセイヨウニワトコと呼ばれる。APG植物分類体系では、レンブクソウ科という。ヨーロッパ原産で森や荒地に生育し、ゲルマン民族の伝統医学など歴史的に治療にも用いられてきたハーブで「庶民の薬箱」の呼び名をもつ。エルダーフラワーは、エルダーの花冠部で、ハーブティーやカプセルタイプのサプリメントの原料として販売されている。
 

一方、アメリカンエルダー (アメリカニワトコ) は、ヨーロピアンエルダー (セイヨウニワトコ) とは別種で、北アメリカを起源とする落葉性の低木で、春から夏にかけて房状の白い花が咲き、紫色から黒色の果実をつける。果実を加熱調理してパイ、パンケーキ、ゼリー、ジュースなどの加工や、ワインの原料となる。また花冠部はワインの着香料としても使用する。エルダーには、このように数種の亜種があるが、ヨーロピアンエルダーがサプリメントなどの加工食品には最もよく使用されている。

花はほんのりと甘いマスカットのような香りがあり、風邪気味の時や喉の調子がよくない時に効果的であるとされる。この辞典では食経験の長いエルダー(ヨーロピアンエルダー) の花や実を中心に紹介していきます。

エルダーは魔界でも有名なハーブ?

エルダーはヨーロッパで石器時代より食料として利用され、紀元前5世紀にはヒポクラテスが書物の中で、エルダーについて記述しています。また、ケルトの神話では人間界と魔界をつなぐ秘密の扉とされ、「黒い女神(魔界のホレおばさんと呼ばれる)の木」として、魔よけの効果など多くの伝承が存在するほどヨーロッパ民族にとっては重要な植物のひとつでもある。

また魔よけの効果など多くの伝承があり、ハリーポッターの杖に使われていることも有名。
おそらくエルダーはヨーロッパ原産で半日陰やや湿り気のある場所を好み、貧弱な土地でもどんどん生長するため不気味な伝承がヨーロッパ各地に存在するのかもしれません。
それでもヨーロッパの人々には身近な植物で、家の守り木的な存在でもあり庭に植えたりしているなじみ深い木です。3mを越すこともあるスイカズラの科の高木で、若い枝の芯が抜きやすいためパイプツリーの名がつけられている。

「インフルエンザの特効薬」とか「田舎の薬棚」としても知られるほど、人々の生活と密接な関係があるハーブだ。

エルダーはヨーロッパで石器時代より食料として利用され、紀元前5世紀にはヒポクラテスが書物の中で、エルダーについて記述している。古代ギリシャ・ローマ時代には、薬用として用いられるほど歴史の深い植物だ。17世紀には「粘液浄化薬」として咳や痰を鎮めるものとして、さらに体内の毒素を排出する利尿薬としても活用された。現在でもヨーロッパでは初期の風邪や発熱性の疾患に対する医薬品として利用される。コミッションEでは承認ハーブとして位置付けられている。


ケルトの木々と魔女

ケルト社会で最も権威があるとされた聖職者(ドルイド)たちは、政治、経済、天候、法律など、あらゆることを樹木にたずね、社会を動かす神託としていました。彼らは薬草の知識にも長け、医師であり、薬草学者であり、預言者だ。

彼らが用いた薬草や薬木は、薬としての効果だけではなく、“シンボル”としての意味をもっていた。
たとえば、サンザシ(ホーソン)は愛を結ぶ樹木、オリーブは光の精霊が宿る樹木。ボダイジュ(リンデン)は魂の治癒のシンボル、ニワトコ(エルダーフラワー)は復讐と威厳のシンボル、イチジクは受胎のシンボル・・・・・・などなど、
現在、メディカルハーブとしても重宝されている、ホーソン(サンザシ)、エルダーフラワー(セイヨウニワトコ)、オリーブなどは古代ケルトの魔術としての力をもつ植物とされました。

また民俗学的には、様々な伝承がヨーロッパ各地に残っている植物でもある。例えばエルダーの木は、ケルト神話では人間界と魔界をつなぐ秘密の扉とされ、「黒い女神(魔界のホレおばさんと呼ばれる)の木」として、魔よけの効果など多くの伝承が存在するほど、ヨーロッパ民族にとっては重要な植物のひとつでもある。ホレおばさんとは、ケルト神話で「精霊、エルフ(ゲルマン神話では北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族、妖精)、自然の支配者」とされる。

ヨーロッパ原産のエルダーは、半日陰でやや湿り気のある場所を好み、貧弱な土地でもどんどん生長するため、おそらく不気味な伝承がヨーロッパ各地に存在するのだろう。それ以外にも、各地には様々な伝承があり、精霊が住むエルダーを伐り倒し、薪に用いるのはタブーとされている。あるいは庭の隅に根を下ろして、家・家畜小屋の壁にぴったりと寄り添う木でありながら、人々は住処の近くに生えるのを嫌い、エルダーの木の下に生ゴミを埋めてコンポストとして使っていた。葉を茹でて漉したものを殺虫剤として利用するなど、ヨーロッパの民族の生活の中に根付いた植物だった。他にもあげるときりがない。

ケルト神話でニワトコ(エルダー)は、例えば前述のように人間界と魔界をつなぐ秘密の扉であり、冥界(魔界)のホレおばさんの国へ連れて行かれ、夏至の黄昏時にエルダーの木の下にいると、エルフの王が通り過ぎるのが見えると言い伝えられている。また、エルダーはホレおばさんに代表される「母」のイメージによりヨーロッパでは尊敬の念を持って「holler(ホラー夫人)」「エルゼ夫人」「Holdermutter(ニワトコ母さん)」などの呼び名を持つほか、ケルトでは「黒い女神の木」とされた。
さらに、生命の誕生と生命の死の両面を持つ木とされ、ケルトとゲルマンの部族は死者をオーク(楡)、菩提樹、ジュニパー、ニワトコの木で埋葬した。人が死に冥界で生まれ変わるときには、コウノトリがその種を運んできてニワトコの枝に置いた後、子供の霊はニワトコの周りで待ち、いずれ母親となるべき人間がニワトコの木を触るのを待つと考えられている。

魔女:魔女という名前を英語では「Wich(ウイッチ)」というが、このWichの語源は「Wise Woman」であり「賢い女性」という意味。つまり、魔女とは当時の賢い女性でヨーロッパの森や野原に生えている香草や薬草を駆使して人々の健康維持や民間療法を施す女性(時に男性)であった。


leaf3_mini 成分ほか

フラボノイド配糖体(ルチン、クエルシトリン)、クロロゲン酸、粘液質、ミネラル(特にカリウムはフラボノイド配糖体と相乗効果をうむ)、精油(リナロールなど)

leaf3_mini安全性と相互作用

安全性
クラス1:適切に使用する場合、安全に摂取できるもの
相互作用
クラスA:相互作用が予想されない(医薬品との相互作用は認められないということ)
(Botanical Safety Handbook 2nd Edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

エルダーフラワーは魔女の薬草としてヨーロッパの民族に様々な伝承療法として活用されてきたわけだが、とりわけ体の中の悪いものを吐き出すという宗教的、民俗学的に、デトックスとしての用途が主だったと思われる。現在での代表的な機能性としては、利尿作用と抗炎症作用、抗アレルギー作用が報告されている。

食経験(食べ続けられた歴史)

アメリカンエルダー (アメリカニワトコ) は、ヨーロピアンエルダー (セイヨウニワトコ) とは別種で、北アメリカを起源とする落葉性の低木で、春から夏にかけて房状の白い花が咲き、紫色から黒色の果実をつけます。果実を加熱調理してパイ、パンケーキ、ゼリー、ジュースに加工したり、ワインの原料となります。また花はワインの着香料としても使用します。エルダーには、このアメリカンエルダーなど数種の亜種がありますが、ヨーロピアンエルダーがサプリメントなどの加工食品には最もよく使用されています。

ヨーロピアンエルダーは食経験も豊富で、中世では、[聖ヨハネの日](6月24日)に、花から作ったお菓子・花・枝がたいへんもてはやされました。またエルダーの実のなり方で、パンの作る量をかえるといった風習もあったようです。「ニワトコの花が咲く頃には、ちょっとだけ発酵させ、パンを焼く。実が熟したらたくさん発酵させ、パンを焼く」といった具合に親しまれていました。

開ききった頭花はそのまま乾燥して花弁のみをむしり取り、フローラルウォーターやコーディアルにし、抽出エキスは自然薬として軟膏・チンキにして活用してきた。実は、熟したら集め、茎から外して生で使うか、乾燥させたものを煎じ薬・シロップ・チンキにしていました。

料理においては、花の持つ甘い香りが好まれ、ゼリーやジャム、ミルクを使った菓子類に使われたり、タルトの果物を煮込むために使われていました。実はスープなどにして寒い季節の晩餐でもあった。

飲み物の文化が乏しいヨーロッパでも、エルダーフラワー・コーディアルは薬草酒とともによく利用されていて、このコーディアルは簡単に言えば花から作る砂糖水である。

もともとは薬草の効能を期待した風邪の予防の飲み物でしたが、体を温めるためにワインと混ぜたり、ワインの葡萄の2番煎じであるピケットという農民が好んで飲んでいた飲み物のアルコール度を高めるためにエルダーの実を入れ発酵させていたようだ。

エルダーと飲み物のペアリングも多く、現在ドイツやイギリスのカクテルバーなどでは、エルダーのコーディアルと白ワインを合わせてトニックで割るカクテルやテキーラベースのカクテルなどが流行っている。

主な機能性(体への働き)

国立健康・栄養研究所の「健康食品の安全性・有効性情報」には、ヨーロピアンエルダーとアメリカンエルダーの2種類の情報が記載されていますが、流感ウイルスに対抗する物質を含んでいて、ウイルスが呼吸器官へ侵入するのを防ぐ機能があると考えられており、花はほんのりと甘いマスカットのような香りがあり、風邪気味の時や喉の調子がよくない時に効果的であるとされます。古代ギリシャ・ローマ時代には、薬用として用いられるほど歴史の深い植物。

ケルト時代は魔女の薬草としてヨーロッパの民族に様々な伝承療法として活用されてきたわけですが、とりわけ体の中の悪いものを吐き出すという宗教的、民俗学的に、デトックスとしての用途が主だったと思われる。

中世以降、17世紀には「粘液浄化薬」として咳や痰を鎮めるものとして、さらに体内の毒素を排出する利尿薬としても活用された。現在でもヨーロッパでは初期の風邪や発熱性の疾患に対する医薬品として利用されている。

発汗・利尿作用とデトックス効果

エルダーフラワーにはルチン、ケルセチンといったフラボノイドやミネラルのカリウムが含まれているため利尿作用で知られる。また腎臓の働きを強化し、毒素の排出を促す。

風邪予防や抗アレルギー作用

抗炎症作用をもつため、風邪やインフルエンザ、花粉症などのアレルギーの症状の緩和に効果があるとされる。またエルダーフラワーティーはのどの感染症予防のために、うがい薬としても活用されている。風邪のひき始めなどに効果を発揮するといわれ、のどの痛みや悪寒など諸症状が出た時に飲まれてきた食経験を持つ。
気管支トラブルには、粘液をエルダーフラワーのティーで押し流し、呼吸器の気道をきれいにすることを助けるとされ、花粉症やアレルギーによるカタル症状に有用だ。その他、外用薬として浸出液や軟膏として用いられ、切り傷やけが、凍傷、日焼け肌などのケアに用いられてきた。

科学的有効性

エルダーフラワーの科学的有効性が示されている分野としては、「インフルエンザの特効薬」と欧米で言われる通り、「インフルエンザや副鼻腔炎への効能」が示されている。(健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース日本対応版/同文書院による評価)

抗炎症作用については、米国国立医学図書館 PubMed®の文献でも、単核細胞や好中球ならびにマクロファージを対象にエルダーフラワーを添加したところ、NF-κBならびにホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ等の前炎症物質活性が阻害され、歯周病菌による炎症反応が緩和されたとの報告もある。またドイツのコミッションEモノグラフ (薬用植物評価委員会) では風邪に対しての使用が承認されている。

 

(文責 ホリスティックハーブ研究所)


参考図書

「西洋博物学者列伝―アリストテレスからダーウィンまで」ロバート ハクスリー著
「ヨーロッパの食文化」マッシモ・モンタナ―リ著 山辺規子・城戸照子訳、平凡社、1999
「中世ヨーロッパの生活」ジュヌヴィエーヴ・ドークール著大島誠訳、白水社、1975
「基本ハーブの事典」北村佐久子著 東京堂出版
「メディカルハーブの辞典」 林真一郎編集
「ハーブティーブレンドレッスン」ハーブティーブレンドマイスター協会編集
「The Green Pharmacy James A Duke著

「The complete New Herbal Richard Mabey著」
「Botanical Safety Handbook アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集」
「メディカルハーブの辞典 林真一郎編集」
「ハーブの安全性ガイド Chris D. Meletis著」
「薬用ハーブの機能研究 CMPジャパン(株)編集」
「Fifty Plants that changed the course of History Bill Laws著」
『西洋博物学者列伝―アリストテレスからダーウィンまで』ロバート ハクスリー著
「ケルトの植物」Wolf‐Dieter Storl (原著)

データベース

Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed®

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